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俺とセレナとクラリーチェの三人は、貧困層居住区に住む女の子に薬をつくるため、薬草の生えているダンジョン『ラテリアの丘』を目指していた。
『ラテリアの丘』へ行くには『ラテリア草原』を通らなければならない。とはいえ『ラテリア草原』は過去、クエスト攻略のために俺たちは来たことがあったので、街から転送ポイントまで転移してショートカットできた。
「転送ポイントって便利よね」
セレナが六角形のクリスタル型の物体――転送ポイントを触りながら言う。
転送ポイントはすべてこの形状をしていて、ほとんどのダンジョンに存在している。これにタブレットをかざして転送ポイント登録すれば、いつでもここに転移できるようになる。
「わたしは最初こわかったなー」
「俺もちょっとこわかったな。瞬間移動なんて、現実世界じゃ体験できないことだし」
「い、言われてみればそうね……。アタシは単に便利だとしか思ったことなかったわ……。どういう原理で瞬間移動してるのかしら」
無言で回転しながら浮遊するクリスタル型の物体を、セレナはちょんちょんと指でつついていた。
『ラテリアの丘』にもこれと同じものがあるはず。
俺たちの今日の目標は『ラテリアの丘』の転送ポイントまでの到達と、俺たちより先に薬草を取りに向かったプレイヤーとの合流だった。
俺たちが今いる場所は、ラテリア草原を半分ほど進んだところ。このダンジョンの奥にある『ラテリアの丘』へ行くには少し歩かなければならない。
もっとも、ここの適正レベルは5だから、魔物にじゃまをされることはない。これほどレベル差があれば戦う以前に、そもそも魔物のほうから近寄ってはこないのだ。
だから俺たちはのんびりと『ラテリア草原』を歩いていた。
周囲にはスライム型の魔物がぴょんぴょん飛び跳ねながらうろついている。額にツノの生えたウサギ型の魔物が俺たちの前を横切る。低レベルのプレイヤーが攻略するこのダンジョンはマスコットみたいなかわいらしい外見の魔物ばかりで、見ていて楽しくもあった。
「えへへっ。お日さまぽかぽかで気持ちいいね」
「そうねっ。歌でも歌いたくなってきたわ」
うーん、と背伸びするクラリーチェ。
鼻歌を歌いだしたセレナ。
俺たちはピクニック気分だった。
「こうやってセレナちゃんとトキヤくんと歩いてると、昔のことを思い出すよ」
「昔のこと?」
「うん。ほら、小学校の遠足で――」
あー、俺も思い出した。
セレナが弁当を持ってくるのを忘れて大泣きしたんだっけか。
「トキヤがお弁当忘れちゃった話?」
こいつ、記憶を書き換えてやがる!?
「あのころからトキヤはおっちょこちょいだったのね」
「セレナ。俺は別におっちょこちょいな性格じゃないぞ……」
セレナの中では俺は一体どういう人物像なのか……。
ドジな弟みたいな存在で、自分はお姉さん代わり。
みたいな関係を頭の中で描いているのなら、俺は猛烈に抗議したい。
「ひえーっ! 助けてほしいのでありますー!」
そのとき、俺たちが進む先の方向から一人のプレイヤーが走ってきた。




