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俺はすぐさまタブレットのフレンド欄を開いた。
俺のフレンドはセレナとクラリーチェの二人だけ。
セレナの項目をタッチする。
セレナのステータスを確認してみるとHPが残り半分を切っていた。
ドラゴンに苦戦しているのか。
――すぐに行く。
俺はクラリーチェのメールにそう返事した。
「オオカミ。さっきの『エンチャント』の力、もう一回貸してくれ!」
俺はドラゴンの棲む火山の方角へ走り出した。
……しかし、オオカミ型幻獣はその場に留まっている。
――俺、動けるのここまで。
行動範囲限界か……。
NPCは動ける範囲が決まっている。オオカミ型幻獣はこの周辺が行動範囲の限界らしい。
なら、ドラゴンのいる火山に住む幻獣を探して、仲良くなってエンチャント化してもらうか……。いや、それでは間違いなく時間が足りない。
「わかった。なら、この場で俺の槍にエンチャントしてくれ」
――わかった。
オオカミ型幻獣は再び光の球体となり俺の槍に宿った。
タブレットを開いてステータスを確認する。
俺の名前の横にエンチャントを示すアイコンが表示されている。そしてアイコンの隅にはエンチャントの残り時間が表示されている。
エンチャントの制限時間は10分。
間に合うかどうか。
火山の山頂にたどり着くと、そこではセレナとクラリーチェがドラゴンと戦闘していた。
大翼をはばたかせて空を舞うドラゴン。
フェンサーのセレナは空に逃げられて攻めあぐねている。
クラリーチェはヒーラー用の攻撃魔法を覚えているが、それでもわずかなダメージしか与えられないだろう。
ドラゴンが口を開いて火炎弾を発射する。
回避が間に合わないとさとったのか、セレナは剣で防御する。
物理攻撃は100%カットできる『防御』であるが、火炎属性である火炎弾はほとんど軽減できず、セレナの頭上に示されたHPバーが一気に減少した。
セレナのHPは残り三分の一を切った。
もはや防御すら許されない。
対して、ドラゴンの頭上に示されているHPバーはぜんぜん減っていない。強固なウロコで攻撃をはじき返しているのか、あるいは上空に逃げながら戦ってセレナの剣を届かせていないのか。
クラリーチェも無傷であるが、前衛のセレナがやられてしまったら彼女もあっという間に倒されてしまうだろう。
「あっ、トキヤくん!」
クラリーチェが俺のもとへと駆け寄ってくる。
「セレナちゃん、『逃げよう』って言っても聞いてくれないの。『ぜったいにドラゴンをやっつけてやる』って……」
俺とセレナは幼馴染だからよく知っている。彼女が負けず嫌いな性格であることを。
セレナも俺の登場に気付いた。
「トキヤ! どうしてついてきたのよ! デッドしちゃうわよ!」
「今は自分の心配をしろ。セレナだって次の攻撃をもらったらデッドするぞ!」
「わたしは負けない。ドラゴンなんかに……」