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4-5

「トサカにきたわ!」


 セレナがタブレットを操作しはじめる。

 覗いてみると、PvPの設定画面を開いている。


「なにする気だよセレナ」

「このギルドにPvPを叩きつけてやるのよ。ここで採集する権利を賭けて」

「無茶言うな。相手は20人近くいるぞ」


 戦いがはじまった瞬間、俺たちは袋叩きにあうだろう。


「なら1対1で勝負よ! こっちはトキヤを出す」

「勝手に俺を代表にするなっ」

「申し訳ないけど、PvPはお断りするよ。だって、そんなことしたって我々のギルドに良いことなんて一つもないじゃないか。そもそも採集や狩りは早い者勝ちが基本だろ?」


 ギルドマスターはタブレットに送られてきたPvP申請を即座に却下した。


「じゃあ、採集はいつ終わるよ」

「夜になるまでかな」


 セレナが握りこぶしを震わせる。


「キミたちたしか、ドラゴンやダークレオを倒したパーティーだろ? ならもっと高難易度のクエストに挑めばいいじゃないか。我々はしがない弱小ギルドでね。初心者に狩場を譲ってくれたまえ、上級者さん」


 俺とクラリーチェは火山の噴火のごとく爆発したセレナを無理矢理ダンジョンから引きずり出し、クエストホームへとどうにかこうにか帰ったのであった。


「超ムカつく連中だったわね!」

「プレイヤーの誰もが善良な人間とは限らない。あきらめろ」


 狩場や採取場所をギルドが占領するのはままある。採集クエストでひたすらレベル上げをしてきた俺も何度か遭遇したことがある。セレナはこれがはじめてだったのだろう。確かに俺も最初は腹が立った。今ではもう慣れたが。


「でも、どうしよう。別の採集クエストを受けるの? トキヤくん」

「そうするしかないな。他にもそこそこ効率のいいクエストを知ってるからそれを受けよう」

「アタシ、妥協って嫌いなのよね」

「嫌いでも受け入れなきゃいけないときがある。割り切ってゲームを楽しもう」

「セレナちゃんやトキヤくんとならわたし、どこでも楽しいよっ」

「クラリーチェ……」


 俺とクラリーチェに説得されたセレナはようやくおとなしくなった。


「なら、教えてトキヤ。次に効率のいいクエスト」

「ああ、まかせてくれ」


 俺妥協案として『桃色貝殻の採集』クエストを提案した。

 浜辺ダンジョンで『桃色貝殻』を集めるクエストである。『蒼水晶』とほぼ同じくらいの発見率で集めやすい。劣っている点は、他に拾えるアイテムが大した額で売れないのと、出現する魔物が少々手ごわいところだ。

 妥協するならこれが最適だろう。

 妥協は大事だ。

 この『ハルベリア・オンライン』は異世界ハルベリアと融合してしまったMMORPG。オフラインのRPGと違って俺たちは主人公でも勇者でもない。単なるいちプレイヤーでしかない。MMORPGを楽しくプレイするにおいて、それを自覚しなければならない。


「わぁ、海で貝殻拾いするんだね。楽しそうっ」


 クラリーチェが喜んでくれた。

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