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21-13

「この宝箱にリネームカードが!」


 ミカさんが宝箱に駆け寄る。


「待ってくださいミカさん!」


 俺はミカさんを呼び止める。

 あの宝箱の形状、ダンジョンに配置されている通常のものとは違う。道具屋に陳列されているのをで見たことがある――『トラップボックス』偽物の宝箱だ!

 しかし、ミカさんは念願のアイテムを手に入れられる喜びで俺の言葉が届いていないらしく、宝箱のふたに手をかけてしまった。

 ふたを上げたその瞬間、宝箱が爆発を起こす。

 巻き起こる爆風。

 俺とミカさん、コルデリアは風圧に寄って散り散りに部屋の隅まで吹き飛ばされてしまった。

 爆発が収まり、巻き上がった粉塵が晴れる。

 俺たちはよろめきながら起き上る。


「こ、これは一体……」

「ひっかかったなバカめ!」


 すると、俺たちの前に思いもよらない人物が現れていた。


「サーベラス!」


 初心者狩り――通称『初狩(しょが)りのサーベラス』があくどい笑みを浮かべていた。


「どうしてお前がこんなところに」

「『どうして』だって? そりゃあもちろん、テメェにたっぷりとお返しをしてやるためさ」

「お返し……? なんのことだ」

「緊急クエストのブラキオン戦で俺さまに恥をかかせてくれた礼に決まってるだろ!」


 緊急クエストって、ミカさんが俺たちを助けてくれたあのときのことか。

 確か俺たちがブラキオンと戦おうとしていたところにサーベラスが乱入してきたけれど、ブラキオンにあっさり返り討ちにされたんだっけか。

 その仕返しって、逆恨みも甚だしいぞ!


「どなたですの? この失礼なお方は」


 コルデリアが露骨に顔をしかめる。


「ちょっとした因縁のあるヤツさ」

「悪者ですのね?」

「そうだ」

「そのとおり。俺さまは悪党さ」


 サーベラスはそう開き直った。


「そんな悪党な俺さまを二度もコケにしてくれて、タダで済むと思ってるんじゃないだろうな」

「どっちも自業自得だろうが!」

「黙れ!」


 サーベラスが俺めがけてナイフを投げる。

 反射的に上体をそらしてそれを寸前で回避する。

 舌打ちするサーベラス。


「レベル1同然のザコのくせに、俺さまにたてつくのが許せねぇんだよ」


 まったく、面倒なヤツに目をつけられてしまったものだ。


「だから、そっちのキザヤローを利用してテメェをここまでおびき寄せたわけさ」

「なにっ」

「名前を変えるアイテムがあるのを本当に信じるなんて、バカなヤツだ!」


 サーベラスがハハハッと笑う。

 ミカさんの手がわなわなと震えている。

 これは相当頭にきている。


「こんな高レベル向けのダンジョンだ。途中でくたばるだろうと見物していたが、まさか最深部までたどり着いてボスまで倒しちまうなんてな。そこは褒めてやる。だが、テメェらもここまでだ」


 俺たち三人のタブレットが同時に通知音を鳴らす。

 PvPの申請。

 サーベラスからの果たし状だ。


「受けな。断ったら連れの女二人に高レベルの魔物をけしかけてデッドさせてやる。ログアウトしたくなるくらいしつこくな」


 さすが悪党を自称するだけある、不愉快なヤツだ。


「誰が断るって言った?」

「そうこなくっちゃな。そっちのキザヤローと小さいのももちろん受けるだろうな?」

「私は今、怒りに燃えている。トキヤくん、私もPvPを受けるよ」

「わたくしもですわ。こんな悪党、けちょんけちょんにしてやりますわ」


 ミカさんとコルデリアはタブレットをタッチしてPvPを承認した。

 俺も『承認』のボタンをタッチする。

 全員のPvPが成立し、離脱防止の障壁が周囲にぐるりと出現する。

 このボス部屋全体が戦いのフィールドとなった。


「さあ、楽しいバトルの開始だぜ!」


 サーベラスはそう叫び、片手を真上にかざした。

 かざした手を中心に魔法円が空中に描かれる。

 そしてその魔法円から魔物が出現した。

 ゾウもひと呑みしてしまいかねないほど巨大なトカゲの怪物。


「魔物を召喚した!?」


 ――ファイアリザード。レベル35。


 タブレットの情報欄にはそう表示されている。

 召喚魔法……いや、違う。

 タブレットをサーベラスのほうに向ける。


 ――サーベラス(テイマー)


 テイマー――魔物使いにクラスチェンジしていたのか!

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