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21-5

「悪いな。見送りに来てくれるなんて」

「見送り? なにを言っていますの?」


 コルデリアが「ふふっ」と笑みをこぼす。

 よく見るとコルデリアの腰には剣が吊るされている。


「我々もお前たちの冒険についていくのだ。我が剣がお前たちの冒険の助けとなろう」


 フレイアが剣を掲げてそう言った。

 気持ちはうれしいが、同行してくれるのはエミリエルだけでいいんだがな……。というか、三人もいるとペット枠に全員入れられなくて転移ができないので困る。

 と俺は妖精たちに教える。


「こう言ってるけどコルデリアとフレイアも外に出たいだけなんだよ」


 エミリエルにそう言われるとコルデリアはいたずらっぽい笑みを浮かべた。


「だって、ずっと村にいるのは退屈ですもの」

「剣士としての修行をしたいのだ。頼むトキヤ。私も同行させてくれ」

「うーん、すまない。一人だけでじゅうぶんなんだ」

「そういうわけで、コルデリアとフレイアはお留守番だよー。さっ、行こう。トキヤくん、ミカさん」

「ちょっと待て」


 エミリエルが二人に背を向けたところでフレイアが彼女を引き留めた。


「『一人でじゅうぶん』とは別にエミリエルではなくても構わないのだな? トキヤよ」

「ま、まあな……」


 俺はエンチャントができれば誰でもいい。まだ試していないが、コルデリアやフレイアでも俺とのエンチャントは可能だろう。エミリエルだけエンチャントが可能というのもおかしな話だから。


「ならばエミリエル。私とコルデリアにもトキヤたちと冒険をする権利はあるはずだ」

「そうですわ。エミリエルだけなんてずるいですわよ」

「えーっ!?」

「正々堂々、戦いでトキヤたちと同行する者を決めるぞ」


 た、戦い!?


「『三剣(さんけん)の戦い』で勝利した者がトキヤとミカに同行する。それでいいな?」

「……うー。わかったよ」


 エミリエルはしぶしぶうなずいた。

 三剣の戦い?

 なんだそれは?


「お、おい。『三剣の戦い』ってなにをするんだ?」

「あら、知りませんの?」


 コルデリアが説明するに、三剣(さんけん)の戦いとは、手のかたちを剣にたとえ、それを互いに出し合って勝敗を決める、妖精の村に伝わる儀式だという。

 握りこぶしが『(ぐう)の剣』。

 指を二本出した手が『兆気(ちょうき)の剣』。

 開いた手が『()の剣』。

 剣はそれぞれ三すくみになっていて――って、これただのジャンケンだ!


「待ったなしの一回勝負だ!」

「わかりましたわ」

「いくよ! さんけん――ぽんっ」


 エミリエルとフレイアがグー。

 コルデリアがパー。

 コルデリアの勝ちだ。


「やりましたわっ」

「わーん! やだやだやだー! わたしがトキヤくんと約束したのにー!」


 エミリエルが駄々をこねだし、両手をぶんぶん振り回してぽかぽかとコルデリアの背中を叩く。


「往生際が悪いぞエミリエル。武人なら潔く諦めよ」

「わたしフレイアと違って武人じゃないもん!」

「三剣の戦いで決めたことは絶対の掟ですわよ」

「うー」


 エミリエルは涙ぐんでいた。

 そこにミカさんが「ちょっといいかな」と手を上げて、皆の注目が彼女にいく。


「私のペット枠にもキミたち妖精を入れられるだろうから、冒険に連れていけるのは二人になるんじゃないかい?」

「らしいぞ、エミリエル」

「もういい! わたし帰るもんっ」


 へそを曲げてしまったエミリエルはシラカバの木立の奥に飛んでいってしまった。

 やれやれ、とフレイアが嘆息する。


「フレイアちゃん。私たちと冒険に行くかい?」

「いや、どうやら私は機嫌を損ねたエミリエルをなだめにいかなくてはならないようだ。冒険にはコルデリア一人を同行させてくれ。それではさらば」


 フレイアはエミリエルを追って俺たちの前から去っていった。

 残されたのはコルデリア一人。

 彼女はスカートの裾をつまんで広げ、上品にお辞儀する。


「それではトキヤさま、ミカさま、よろしくお願いいたしますわ」

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