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「まことに……まことに感謝いたします」
システィーナさんは微笑みながら涙ぐんでいた。
「あっ、そうですわ」
システィーナさんは小走りで鏡台のもとへ行き、そこに置いてあった小さな木箱を開けて中からなにかを取り出し、俺たちのところへ戻ってきた。
「ではせめて、これをお受け取りください」
彼女の手のひらにはひとつの指輪があった。
指輪には緑色の小さな宝石がはめられている。
「これは父が生前、古代の遺跡の冒険に行ったときに持ち帰ってきたものです。資産としての価値はほとんどありませんが、どうやら魔力を宿した指輪らしいのです。冒険者のみなさまにとっては価値のあるものでしょう。どうぞ冒険にお役立てください」
俺はその指輪にタブレットをかざす。
――緑宝石の指輪。
システィーナさんの言うとおり、装備すると魔力が増加するようだ。
不思議だったのは、それに赤文字で『売却不能』と表示されていること。特別な効果のない、単純なステータスアップの装備品がどうして特別アイテム扱いなのだろうか……。なにか別のイベントのキーアイテムなのか……。
「それじゃあもらっちゃおうかな。ありがとっ、システィーナさん。お父さんの形見の指輪、大事にするわ」
セレナが代表してその指輪を受け取った。
そうして俺たちのフロストドラゴン討伐クエストは終わった。
雪のダンジョンを攻略したり、幻獣に捕まったりと、紆余曲折あったクエストはようやく終わり、俺たちはクエスト完遂を祝うため酒場へと訪れた。
そして二階へ行き、ある人をさがす。
その人はいつもの席でピザを食べていた。
「ミカさーんっ」
クラリーチェがその人に駆け寄る。
その人――勇者ミカさんはその声に気付くと「やあ」と小さく片手を上げ、キザな笑みで応じた。
「ちょうどこのピザが食べきれなくて困っていたところだったんだ。どうやら四人分の大きさを頼んでしまったらしい。キミたちも一緒に食べてくれないかい?」
「はーいっ」
そういうわけで俺たちはミカさんと相席で食事をとることにした。
ミカさんはぶどう酒を口に含む。
ウェイターが注文を聞きにきたので、俺たち未成年はジュースを頼んだ。
飲み物が来る間、俺たちはピザを食べながら今回の冒険をミカさんに話した。
「フェブル雪原! そんな遠くまで行ってきたのかい。それにドラゴニュートに捕まったり、フロストドラゴンと戦ったり……。ははっ、キミたちは大冒険をしてきたようだね」
「ドラゴニュートさんに捕まって檻に入れられたときはわたし、もうここで冒険が終わっちゃうんじゃないかと思ってドキドキでした」
「ヘタをしたら脱出もできずデッドでリスポーンすることもできず、永遠に檻の中で暮らすことになったかもしれないね」
「ひえっ」
クラリーチェは震えあがった。
ミカさんは「冗談さ」と軽い口調で言った。
「それにしても、キミたちは本当に大したものだね。これで二体目だろう? ドラゴンを倒したのは」




