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19-11

 あくる日、俺とセレナとクラリーチェはドラゴニュートたちに惜しまれながら集落を後にし、拠点の街に帰還した。

 そして俺たちは今、街の霊園にいる。今回のクエストを依頼してきた貴族の令嬢システィーナ・ブランさんと共に、数多ある墓のうちのひとつの前に立っている。

 墓石には日付と『ドルガン・ブランここに眠る』と文字が刻まれている。フロストドラゴンに敗れて命を落とした、システィーナさんの父親の墓だった。


「お父さま……。お父さまの(かたき)は取りました。こちらの冒険者の方々がフロストドラゴンを倒してくださいました」


 システィーナさんは墓に祈りながらそう言う。

 それから俺はドラゴニュートたちから譲り受けた槍を墓のそばに突き立てた。

 この槍はシスティーナさんのお父さんに譲ることにしたのだ。

 フロストドラゴンに敗れはしたものの、この人だって強大な魔物に立ち向かった英雄だ。この槍を受け取る資格はあるはずだ。少なくともステータス不足で装備できない俺よりは。


「本当にありがとうございます。トキヤさん、セレナさん、クラリーチェさん」


 ぺこり。

 システィーナさんが俺たちのほうを振り返ってお辞儀する。


「しかし、フロストドラゴンを倒していただいたうえ、大事な槍までいただいてよろしかったのでしょうか」

「フロストドラゴンの討伐を俺たちに依頼したのはシスティーナさんです。だから俺たちを『選んだ』あなたがこの槍を受け取ってもいいはずです。ドラゴニュートたちも死者を悼むためなら納得してくれますよ」

「……はい。わかりました」


 システィーナさんは儚げに微笑んだ。

 しかし彼女の顔が急にゆがみ、苦しげに咳をする。


「こほっ、こほっ……」

「システィーナさん!」

「いえ、わたくしなら平気です……」


 そう言いながらも彼女の顔は青ざめていた。


「ブラン家がなくなってしまう前に父の願いを叶えられてよかった……」

「そんなこと言わないでください」

「いえ、自分の命があとどれくいかは自分がよく知っています……。しかしもはや死は恐ろしくありません。生きている間にやり残したことはトキヤさんたちが成し遂げてくださいました。あとは父のもとへ行くだけです」


 それから俺たちはシスティーナさんの屋敷に戻った。彼女の顔色は悪いままだったので、彼女の歩調に合わせてゆっくりと帰ったのだった。

 屋敷に戻ると、再びシスティーナさんの部屋に入る。


「それではみなさまに今回の報酬をお渡しいたします」

「んーん。報酬はいらないわ」


 セレナが首を横に振ったので、システィーナさんは「えっ」と目を見開いた。


「システィーナさんのおうち、お金に困ってるんでしょう? そんな人から報酬は受け取れないわ」

「しかし、なんの報酬もなくフロストドラゴンを討伐させただなんて、そんなことをしてしまったら家名に傷がつきます。わたくしの家の事情は構いません。どうぞ報酬をお受け取りください」

「だーめ。そのお金でお医者さんに身体を診てもらいなさい」

「そうですよー、システィーナさん。これで報酬をもらったら、わたしたちの冒険者としての名前にだって傷がついちゃうんですよー」

「……クラリーチェさん」

「それでいいよね? トキヤくん」

「もちろんだ」


 俺もセレナとクラリーチェに同感だった。

 報酬は受け取れない。

 俺たちはフロストドレイクとフロストドラゴンを撃破したときの経験値を得ているから、まったくの無報酬というわけでもない。それなら現状、お金に困っているシスティーナさんを助けてあげたい。

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