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「それじゃあトキヤ、パーティーから外すわよ」
俺はついにその宣告をされた。
赤髪ツインテールの少女セレナがタブレット――各プレイヤーが所持している、ステータスやマップなどを見られる小型汎用端末――を起動させ、『メニュー』『パーティー』と続けてタッチして画面を切り替えていく。
■パーティー
1:セレナ(フェンサー) リーダー
2:クラリーチェ(ヒーラー)
3:トキヤ(ランサー)
そして俺の名前にカーソルを合わせて『パーティーから外す』を選択した。
■パーティー
1:セレナ(フェンサー) リーダー
2:クラリーチェ(ヒーラー)
――パーティーから外されました。
そんなログが俺のタブレットに表示される。
俺は正真正銘、パーティーから除外されたのであった。
「セレナちゃん。トキヤくんがかわいそうだよぉ」
おっとりとした口調の金髪の少女クラリーチェが俺の味方をしてくれる。
セレナは「し、しかたないじゃない……」と後ろめたげに言う。
「トキヤにはレベル上げの時間を三日もあげたのよ。なのに、ぜんぜん強くなってないもの」
「強くなったぞ。三日で3レベル上がった」
「そうだよー」
「レベルは上がったわ。確かに上がった。でも、ステータスがぜんぜん伸びていないのよ」
そのとおりであった。
セレナにパーティー追放まで三日間の猶予をもらい、その間ひたすら格下の魔物を狩ってレベリングにいそしんだ。その結果、3レベル上げることができたのだが、肝心の攻撃力や防御力といったステータスが伸びなかったのだ。
ほんの1ポイントたりとも。
俺とセレナとクラリーチェは異世界ハルベリアとMMORPGが融合した世界『ハルベリア・オンライン』に閉じ込められてから1か月経った。
これまで三人で『ハルベリア・オンライン』の世界を冒険してきてレベルも15になった。それなりに強くなり、いろんなダンジョンに挑戦できるようになった――セレナとクラリーチェは。
俺は15レベルに上がっても、ステータスがどれも初期値のままなのだ!
ちなみに職業は槍使い――つまりランサーだが、スキルもひとつもおぼえていない。初期スキルさえ。
バグなのか大器晩成なのかはわからないが、前衛で頑張るセレナの足手まといになっているのは嫌ほど自覚していた。レベルを15にまで上げられたのも、パーティーの経験値分配のおかげである。戦闘ではほとんど俺は役に立っていなかった。
お荷物以外のなにものでもない。
「レベル1相当のステータスでスキルもゼロ。これじゃヒーラーのクラリーチェの負担が増えちゃうわ」
「わ、わたしは負担とかだいじょうぶだから」
「アタシはだいじょばないのっ。いざというとき回復してくれなくちゃ困るんだから。そ、それに――」
「それに?」
「ト、トキヤがデッドしたら困るでしょっ」
セレナが顔を赤く染めて言った。
俺のことを心配してくれてるんだな……。
セレナは俺から視線をそらし、赤くなったほっぺたを指でかいている。
そんな照れ隠しがかわいらしい。
ただ、それでも俺は食い下がる。
「俺にもスキルがある」
「トキヤのスキル欄にはなにも表示されてないわよ」
「それでもあるんだよ。俺には」
「まさか『アレ』のこと? 『幻獣と会話ができる』っていう」