首席VS厨二病?
「奥山か、お前は中学の時から対人相手の戦闘が得意だと中学校から資料が届いているし、いい戦いになりそうだな」
さすがに先生も主席が負けると思っていないようだ。
だけどあの試験にはいろいろと欠陥がある。
俺たちは推薦でほぼ合格は確定していたが一応試験もうけたのだ。
あの試験の欠陥はそれは固有魔法に触れる部分がほとんどないことだ。
固有魔法は中学の時の資料と面接の時ぐらいしか出番がない。
そこが大きな問題だと思う。
筆記試験はいい難易度だったし、魔力の試験は魔力量だけじゃなく魔力操作、一度に放出できる量、身体強化の具合とそれを扱えているかなど良い試験だったと思う。
だが、固有魔法に関する試験が甘いのは大きな欠陥だろう。
固有魔法を特化さして鍛えているものなどがクラス替えの時に上がってくるだろう。
とまあそんな風に俺は考えるわけで主席の良光はこの中で最もBランクに近いだけで最も強いわけではないと俺は考える。
と言っても奥山が固有魔力の熟練度がすごいかどうかはわからないので勝敗は正直わからない。
「じゃあ魔界に転移してくれ。良光は俺も向こうに送ってくれ」
俺は目をつむりちょっと集中して魔力を動かし魔界に転移した。
目を開けると周りは荒野に変わっていた。
一応目を開けても転移はできるのだが、乗り物酔いに似た症状がほぼ100%くるので基本的にしない。
「よし、まずルールだが試合と言っても模擬戦なので俺が辞めと言うかどちらかが致命傷になりうる攻撃を寸止めしたら勝ちだ」
「寸止めしないといけないのか?」
「まあ一応模擬戦だからな」
「まあ一応我が師の命令だ。善処しよう」
「僕はそのルールで問題ないですよ」
「よしじゃあ始めようか。お前たちは少し離れたところから見ていなさい」
そういいながら先生も俺たちと共に下がった。
「おっと、これを忘れるところだった」
そういいながらどこからともなく取り出した魔鉱と剣と盾をとりだした。
剣は大きさ的におそらく片手剣だ。
盾は普通の長方形の盾だ。
生産職によるエンチャントもついてないしあまり高価なもではないのだろう。
そして魔鉱?というのは奥山武器なのか?
「これがお前らの武器だろ。ほら」
取り出した武器を良光と奥山に向けて投げた。
「やはり武器は源からオーダメイドで生み出すに限るな」
なぜかと思って頭の中読んでたらビンゴ、何かを媒介にして武器を作ると重さが媒介の重さになるので軽くなるのだとか。
中の声で言うと二刀流したいけど作った剣重いしぶっちゃけ二本も持てないだよね~、これを思いついたときは私天才かとおもったわ。
普通にJKみたいな口調だなと思った。
まあ中では普通になる時もあるんだな。
じゃあもう普通にしたらいいのに。
厨二病ってめんどくさそうだな。
「よしじゃあ始めようか、全員離れたらそちらのタイミングで始めてくれ」
俺たちがある程度離れると二人は武器を構えた。
攻撃は奥山から始まった。
良光の方に走り縦に剣を振り下ろした。
ただの剣の振り下ろしなので良光も余裕で防御した。
だが、反撃もしない。
反撃が容易な大振りだったがもしここで反撃して奥山が致命傷になってしまう可能性を危惧しているのだろう。
そんな良光の心情を読んだのか奥山は大振りな攻撃で良光の苦手な攻撃を探っている。
上下左右はもちろんのこと、斬撃だけではなく刺突や柄の部分での殴打。
至近距離、相手の間合い、こちらの間合いそれぞれの場所で相手が苦手な攻撃を探る。
これは見ている側も良光の弱点が露点してありがたい。
まあ良光にとっては最悪だろうがな。
だが、良光も防戦一方というわけにはいかず盾での攻撃や遅めの攻撃をしている。
まあそんな攻撃をくらうほど奥山は弱くないらしい。
少しずつ奥山の攻撃が緻密にさっき調べた弱点を突く動きに変わっていった。
そして、やっと良光の攻撃が本格化し始めた。
今までの攻撃を捌くにはある程度の能力だ。
必要な能力というのは身体強化と剣の技術が必要だ。
身体強化は盾攻撃で剣の技術は緩めの攻撃で嫌らしい位置を突くことで判別していた。
特に二刀流なんて恐らく小学校、中学校の戦闘教育で講師はいなかっただろうし、ほぼ独学。
独学は攻撃はいけても防御が薄くなりやすいがあの位置の攻撃を捌けるのならばある程度の技術はある。
そう判断したうえでの攻撃開始だろう。
攻撃開始した後は流石首席というべきか、身体強化の身体能力に差がある。
奥山は防戦気味だがしっかりと攻撃を対処している。
少しの間攻防変わらず奥山が防御を続けている。
だが、未だに良光の攻撃が奥山届くことはない。
自分よりも力の強い良光の攻撃をすべて捌ききっている。
むしろ自分の行動域を少しずつ広めていく。
そして、防御が攻撃に変わろうとした時、良光の剣が光、光の斬撃が飛んだ。
奥山はそれを寸でのところで避けた。
良光の頭の中を覗くと、あれはライトスラッシュとかいう恥ずかしい名前の聖騎士の特殊能力らしく魔物に与えるダメージが多い技らしい。
それでも人にも相当なダメージを与えれるためよく使う技らしい。
奥山は少し距離を開けたがそれが悪手となった。
良光がライトスラッシュを連発し、距離を取って攻撃を繰り出した。
さっきよりも防戦一方になった奥山は体を大きく動かし攻撃を避ける。
だが、それにも限界がある。
攻撃が奥山に届きそうになった時、奥山の固有魔力の剣製が発動した。
攻撃を作った大きめの剣で防いだ。
そして、剣をシーソーのような形に作ると同時に組み立て逆側に大剣を落とした。
一瞬でそんな芸当できるのは相当な技術が必要なのだろう。
そして一気に距離を詰めた奥山は大きく振りかぶった剣の柄頭の場所に剣を作成しそこから良光に向かって剣を放った。
普通じゃない芸当だ。
シーソーあたりから普通じゃなかったが、剣の柄頭にもう一つ剣を作りそれを飛ばすなんて普通思いつかないし思いついても実行できない。
普通じゃないレベルの技術は持っているようだ。
頭の位置に放たれた剣を良光は盾を使い剣を防いだ。
だが、その防御のせいで奥山が見えなくなった。
奥山は盾と剣をぶつけ、盾を起点にさらに奥に飛んだ。
良光の後ろ側に回りこんだ奥山は振り向きもせず剣を突き刺した。
・・・致命傷はだめなのでは?
と思ってよく見てみると剣は後ろを向いていたのにもかかわらず良光の脇の下あたりの空を刺していた。
俺の主観だけど勝負は最初から最後まで良光のターンはなかった気がする。
いや、これは俺だけの感想で恐らくほかのものにはこの戦いは接戦に見えただろう。
だが、実際は奥山はいつでも勝負を終わらせれたのだろう。
奥山の頭の中を見てみると攻撃を受けていたのも一度後ろに下がったのも良光を測るためだったようだ。
まあ、これは身体強化を解いた奥山の頭の中を今見て言っていたことなのでただの強がりという可能性もある。
奥山、戦闘に物凄く向いている固有魔力を持ったわけではないが相当の鍛錬を積んでいるのだろう。
戦闘向きの熟練度以上に戦闘向きに見えるほどには熟練度が高い。
だが、まだ良光も隠し玉をいくつか持っている。
これは良光の油断や寸止めという制限が生んだ敗北だ。
詳細まではわからないが、この勝負の勝敗がひっくり返る程度の能力はありそうだ。
だれも予想していなかった勝者に戸惑った空気を放つ中で俺はそんなふうに考えた。




