1年前に脳梗塞になった話
(2019/12/2)リクエストがあったので、費用を追記しました。
今から1年前に脳梗塞を発症し、復帰した。なかなか得難い体験なので思い出せる範囲で書き残しておこうと思う。
2018年12月1日(土曜) 朝10:30頃、目が覚めて右腕で左に体を起こしたらそのままふらっと左に倒れ込んだ。どうもおかしいと思いながら立ち上がり、ふらつきながら廊下に出たところで左の手足が揃っておかしい。
家族や親戚が何人も脳卒中を経験している知識から、これは脳だと判断して、すぐに別室の妻に「救急車呼んで!左半身がおかしい」と叫んで、不自由な左半身をおしてトイレまでいって尿をした。
トイレを出てすぐに寝室の棚から診察券ファイル、財布、カードケースなどを救急車用に用意し、寝巻きのポケットにスマホを入れて廊下に出たら倒れ込んだ。立ち上がろうとしてもすぐに倒れ、立ち上がれなくなったので、そのまま座って救急車を待った。
救急車が到着したらすぐに運び出され、救急車の中で様子を聞かれる。脳梗塞らしいと判断されたらしく、救急隊員がスマホ操作ですぐに行き先病院が決まったので、妻も乗って出発した。
左半身が強くしびれて動かない。右の耳やつま先もしびれ、体の芯から寒い。右のしびれは貧血の症状っぽかった。
救急隊員に発症時刻を聞かれ、起きてすぐ症状があったと答えると睡眠時間を聞かれ、アクティビティトラッカーのスマホアプリの睡眠情報を見ると7時間ぐらい寝たようだと答えると「あぁ・・」という残念なため息が付かれた。
これは、血栓を溶かす薬の適応の発症経過時間をオーバーしている可能性があるということらしい。
病院の救急に到着したらすぐに頭部CT, 頭部MRIが撮影され、さらに胸部レントゲンを撮影した。
運び込まれているときにはとにかく私は身近な経験の知識から失語症が怖い、ちゃんとしゃべれているか、と救急の人に問いかけ、大丈夫との答えを聞いてすこしほっとした。
そして救急の医師が妻に説明しているのを後ろに寝かされた状態で聞いた。
脳の断層画像の中心付近が少し白くなっていて、ここは運動と感覚を司るところだと言っていた。そこで、まだ他の原因の可能性もあるが、脳梗塞の可能性が高いと説明された。
脳梗塞の血栓を溶かす薬(t-PA)は使えないのか聞いたところ、発症時刻から5時間だかを超えていると大出血のリスクがあるので、発症時に誰かと会話していたみたいな明確な発症時刻が分かる場合以外は使えない、そのため使えるケースは運び込まれたうち5-10%程度でしかない、との返事だった。
私は睡眠中だったため、いつ発症したのかわからないから残念ながら使えないそうだ。代りに、血圧を上げて詰まったものを流すなど、いくつかの薬剤を点滴で投与する治療をするらしい。
そしてSCU(脳卒中ケアユニット)という部屋に運ばれ、ベッドに移された。
この時点で昼すぎぐらい。
脳梗塞の種類は毛細血管が詰まったラクナ梗塞。影響したのは左半身の運動系と感覚系。幸い右手右足は影響を受けなかったが、当初は左半身は顔から足先まで全体に痺れが強く、また動きもそれぞれの筋肉の力の入り方がランダムで、正常な人体は対抗する感覚が協調することで安定しているということがよく実感できた。
とにかく歩くことができない。足の筋肉全てが少しでもおかしいと体重を支えてバランスを取ることができない。
なんとか歩けるようになっても、ふわふわしたでこぼこな面の上を歩いているような浮遊感を感じる。
エレベーターのボタンが押せない。狙ったところに手が行かない。
茶碗を持っても勝手に下がる。目的の軌道を通らないのでぶつける。
トイレには車椅子に乗せていってもらうと、脳卒中患者が入る病棟らしく、壁には大きく「一人では絶対にトイレに来ないでください」みたいな張り紙と、転倒するイラストが掲げられていた。
治療開始が早かったのが功を奏したのか、その後急激に回復し、数日してなんとか歩き回れるようになった。
喜び勇んでお風呂に入ると、中にあるスロープに立った途端に倒れた。
練習で歩けるようになったのはあくまでも水平なところのみで、傾いた場所でのバランスは別途学習が必要ということのようだ。
そう考えた結果、とにかくいろんな方向に加速度がある状態でバランスを取るというシチュエーションを作るため、方向転換を行うスラローム歩行を繰り返す。
荷物を持って力のかかり方を変えて歩く。
ジャンプする。
運動部の室内トレーニングかな?という様相である。
リハビリ。
作業療法士(OT)と理学療法士(PT)がリハビリ室にいて、そこに平日少しずつ通って軽作業や歩行、階段、マット運動などを行う。
退院後に運転がしたいため、運転能力の確認をするテスト(SDSA日本版)をやってもらった。
自転車も乗りたいのでエアロバイクも利用。
とはいえリハビリの量が物足りないため、自分でも年中何かやることにした。
リハビリ室で使っていたリハビリ用の道具(硬い粘土)を通販して家族に持ってきてもらい、手先の訓練。見舞いに来てくれた同僚がくれたルービックキューブ。
ポメラを家族に持ってきてもらい、タイピングの訓練。
売店。
今回は入院に際して財布を持ってこなかったのだが、売店が電子マネーなどのスマホ決済対応だったため、スマホだけでなんでも買えた。これは良かった。
退院。
経過が良かったようなのと、早く退院したいと主張したため、10日でスピード退院した。
退院時には先生に運動を強く勧められた。とにかく運動こそが沢山の問題を予防するらしい。
救急が迅速だった理由もそこで教えてもらった。埼玉県は数年前から埼玉県急性期脳梗塞治療ネットワーク(SSN)という名前で、脳梗塞の救急体制の迅速化の整備がされていたらしい。
(2019/12/2追記)費用。
退院時の請求だが、12月1日入院・12月10日退院で、診療点数52,215点、3割負担で保険部分は156,650円、それに食事代12,420円と(途中で個室があいたということで希望したため)差額ベッド代22,500円、合計で191,570円をクレジットカードで支払った。
なお、保険部分は高額療養費に該当するため、収入に応じて決まっている自己負担額を超える分は差額が後日振り込まれる。
私の場合は会社で加入している保険組合(関東ITS)は追加で自己負担を下げる差額も支給してくれるため、合計で10万円以上は戻ってきたと思う。なおここの内訳は家族合算の表示だったため、入院に対する明確な金額は分からない。
退院後は、実はすぐに職場復帰した。
年末に有給をあらかじめ取得していたため、それまですぐだったのと、在宅勤務なのでそれほど不安がなかったからである。
通院は、もともと脳動脈瘤の破裂予防のためにかかっていた脳神経外科があったため、そちらに転院し、薬とMRI検査を定期的に行っている。
運転免許証の更新。
後日、運転免許の更新に行った。そこで脳梗塞から退院したと伝えると、通常の更新の手続きに加えて、長い紐を出してきて「この真ん中をつまんでください」みたいな数種類?の追加テストが行われた。心配なので申告しただけだったが、どうやら平成26年から、脳卒中を含む特定の病気にかかった場合、更新時に申告するのは義務化されていて、虚偽申告は罰則があったらしい。知らなかったがたまたま言ったためセーフである。
生命保険。
三大成人病の払い込み免除特約とか一時金なんかがあるはずなので問い合わせたが、後遺障害の条件にあわないということで降りなかった。まあ、これはむしろ良い話なのか。
歩行。
歩行に必要な筋肉の一つでもコントロールに大きな誤差があるとそこを起点にバランスを崩すため、退院後もしばらくは注意しながら歩く必要があったが、退院から8か月ほど経ったところで、最後のピースがはまった感じがして、突然意識せずに歩くことができるようになった。麻痺した左足の片足立ちでも3分以上いけるようになった。
とはいえまだしばらくは違和感は残っていて、他の全身を駆使したリカバリーが効くことでなんとかなっていたのだが、ジムに通うようになったり、最近だと任天堂Switchのリングフィットアドベンチャーなどで意識して体を動かし続けていた。
というようなことをしているうちに、発症から約1年というところで先日、やっと正常に動けると実感できるようになった。
むしろ体は発症前よりしっかりしてきたかもしれない。
とりとめがないが、記録としてはこの辺にしておこうかな。
誤字報告ありがとうございます。