97.………………………………………
「…」
パチパチと小さく弾ける焚火に木を追加する。
姫様は俺と食事を共にした後、使った食器を全て洗っている内に天幕に入りお眠りになった。
「…」
そして俺はいま見張り中というわけだ。
疲れている2人に見張りを頼むほど俺は騎士道からは外れていない。
俺も疲れていないわけではないが、この程度ならあまり苦では無いのだ。
「……」
不意に俺が殺した騎士、カーンを思い浮かべる。
あいつは何故姫様を裏切ってしまったのだろうか?
未だに彼女を殺した時の感覚が残っている。
「……」
彼女には姫様を裏切るほどの理由があったのだろう。
それは今は亡きヘイセウの仇討ちだったのかもしれない。
本来ならばすべてを捨ててでも王国の為に行動するのが騎士だ。
彼女だって俺と同じく騎士になる為の訓練を受けているはずだが、ヘイセウの騎士となって前線から離れた時間が彼女を変えてしまったのかもしれない。
「……」
もし…もしも、あの時俺がカーンにかけた「王は私達に心を失えとまでは言っていない」という言葉が彼女を後押ししたのだとしたら…
…俺がそうさせた…といっても過言では無いのではないか?
「…カーン、お前は……」
それに一つ気になる事がある。
それはあの時彼女が最後に俺に言いかけた言葉だ。
(カロンッ!こいつは!お前も騙し-)
「…騙している、と伝えようとしたのか…?」
姫様は、俺を騙している…か…
…姫様の行いはこの目でしっかりと見てきた。
確かに、姫様は俺を騙して利用しようとしているのかもしれない。
そして要が済めば…姫様は全てを見てきた俺を始末なされるつもりかもしれない。
「…だが…俺は騎士だ」
…たとえ最後に姫様に殺されようが構わない。
たとえ姫様が誰に裏切られようが、騙されようが…俺だけは姫様を決して裏切らない。
必ず守り切って見せる。
「…姫様を守り抜く…!たとえこの身体が朽ちようとも…絶対に…!」
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「………………………………………」