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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第3章:光と闇の双子
95/226

95.もう一人にはさせないから



「…」



 僕は何をしているんだろう。


 周りを見渡そうとしても、なぜか何もみえないんだ。



「……」



 怖いなぁ…


 ……そうか…怖いのか、僕は。



「………」



 今まで怖いなんてほとんど思ったことはなかった。


 僕はいつからこんな弱虫になってしまったんだろう?



「…………」



 昔の僕にあって今の僕に無いのはなんだろう?


 それが分かれば…もう怖くは…無いはずなんだ。



「……………」



 ふと上を見る。


 真っ暗で何もない空には一筋の光が灯っている。


 その光を見ているとなんだか…不思議と心が落ち着く。



「………………カレン」



 ああ…そうか…


 昔の僕にあって…今の僕に無いのは



「…………………カレン」



 君だったんだね…



「……………………カレン」



 君さえいれば僕はもう…



「………………………何も怖くはない」



///////////////////////////////////////////





「…うっそだろぉ」



 何かをはがすような音を立てながら再び立ち上がろうとするイレスを見てスタンは驚愕する。



「スグ…ニ行クカ…ラ」


 

「うて…撃て!撃つんだ!早く!!」



 スタンはあることに気が付き、焦って正門で瓦礫の撤去を始めていた門番に攻撃指示を出す。



「…へ?あ、はい!」



 門番は動き始めたイレスを見て理解したのか黒い人型に魔力の杭を三連射する。



「これでどうだ!」



 発射された3本の杭は全てイレスに突き刺さる。



「バカぁ!違う!"翼"だよぉ!!!!」



「…はぁ?つばさ、ですか?そんなもんどこに」




ビリビリビリビリビリビリビリビリ




 直後、不気味な音と共にイレスに翼が生えた。



「こいつ!石畳に広がった体液を固めて翼の代わりにするつもりなんだよぉ!!!!」



「なッ!?」



 イレスは自分を中心に広がっていた黒い液体だったものを石畳からビリビリとはがすと、黒い体液と強い暗闇をまき散らしながら頂上カレンへと一直線に飛翔する。



「本当に飛びやがった…!」



「あ…ああ…終わったぁ…終わったよぉ…」



 スタンはぺたんと石畳に尻餅をつく。



「さ、行きますわよ」



 サリンは放心しているスタンの頭に手を乗せると転移魔術を行使した。




///////////////////////////////////////////////////////////



「カレン…!カレン!」



 イレスはカレンの元へと全力で飛ぶ。


 もはや彼らを止めるものは誰もいない。



「…?イレス…?イレスなの…?」



 イレスがカレンに近づくにつれ彼らの周辺が歪み始める。



「カレン…!僕ダ…!ズット…!」



 変質したイレスのおぞましい身体は強い光を浴びて少しずつぼろぼろになっていく。



「イレス…!約束を守ってくれたんだね…!」



 そしてついにイレスはカレンの手を取った。



「ズット…ずっと探してたよカレン」



「分かってるよ。ずっと"ここ"から見守ってたから…」



 イレスは自身の闇の力によりぼろぼろになっていくカレンを強く抱きしめる。



「もう一人にはさせない…から」


「うん…。一緒に帰ろ…」





 その日、人工太陽カレンとイレスに照らされた町、グラムレインは地上から消え去った。




//////////////////////////////////////////////////



「光の子は闇を吸収して光を生み出し」



 グラムレインを見下ろすことができる丘にサリン一行は転移していた。



「闇の子は光を吸収して闇を生み出しますわ」



 スタンにサリンの説明はまるで聞こえておらず、つい先ほどまでグラムレインがあった場所を見つめていた。



「そしてその二つが出会えば…お互いに吸収と生成を繰り返し…」



「臨界点を超えた時点で…あのように広範囲を消却することが可能ですわ」



 サリンもグラムレインだった場所を見つめながら表情一つ変えずに説明を続けている。



「まぁ…2つ同時に臨界点に達する必要があるから、近い存在…例えば双子であるのが好ましいですわね」



「わたしの実験の成果が…」



「…せっかく説明して差し上げているのに…聞いていませんわね?」



 サリンは眉をハの字に曲げながらあきれる。



「私は聞いていますよ。姫様」



 そしてこんなことになろうともカロンはいつも通りであった。

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