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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第3章:光と闇の双子
91/226

91.最初から私も


「カレン…カレン……」



「まて!待つんだ少年っ!」



 広範囲人型消却爆弾の作成工程により人間からかけ離れた能力を凝縮されたイレスは光の子になり果てたカレンの姿を見て暴走状態になってしまっていた。


 一般人の身長を二回りほど上回る程に膨張した真っ黒の体からはドロドロとした黒い魔力の塊があふれ出している、こぼれた魔力の塊が石畳に付着するとすぐに石畳が変質して青白い光を放ち始めるほどの魔力だ。



「カレン…」



 暴走したイレスは魔学研究所の正門を突き破り青白い道を残しながら塔に繋がる廊下を進んでゆく。



「少年…!まさか塔へ向かっているのか…!?」



 そしてカーンは気がついた。



「約束した人…カレンの元へ向かっている…のか…」



 本来ならばここまで変質してしまったら討伐するべきなのだろう。


 だが、カーンは会いたい人に合えない辛さを知っている。



「私は…騎士…なんだぞ…」



 この変質してしまい暴走した少年と私は同じだ…


 ただ、大切な人に会いたいだけなんだ。


 私はもう大切な人に合うことはできない、だがこの少年はどうだ?まだ…間に合うじゃないか…


 私がもう会えないからといってこの少年の思いを踏みにじって良いのだろうか…?



「ヘイセウ様…わた…しは……」



「醜い化け物ですわね」



 直後、一直線に塔へと進んでいたイレスの足元が爆発した。


 爆発により砕け散った廊下の石畳は飛散し魔学研究所の内装はボロボロだ。 



「痛い…痛い…カレン…」



 爆発により吹き飛ばされたイレスはそれでも進もうとしている。



「サリン様…」


「何をしていますの、貴女も騎士ならばこの化け物を止めなさい」



 いつの間にか現れたサリンはもう一度イレスを吹き飛ばすために魔術を行使しようとする。



「サリン様、お待ちください」


「なんですの」



 …初めてヘイセウがサリンとあった後、ヘイセウがサリンから黒い飴玉を貰ったという話をしていた事をカーンは覚えていた。


 そして、ナレが化け物になる直前に飲み込んだものと同じような物だった事も…覚えていた。



「サリン様…単刀直入に尋ねます。ヘイセウ様を殺したのは貴女ですか」



 サリンはニッと白く整った歯をちらりと覗かせて笑う。



「”わたくしは”殺していませんわ」


「そうですか…」



 カーンは鞘から直剣を抜く。



「私は…もう王国の騎士ではありません」



「へぇ…」



 もう、覚悟は決めた。


 王国全土が敵に回ろうとも



 私は……



「私は……ヘイセウ様の騎士だッ!!」



「やはり他人は信用なりませんわねッ」



 直後足元に魔力が凝縮し、その魔力で構築された杭が複数発射される。



「ハァッ!!」



 カーンは発射された杭を直剣と鞘で全て叩き落す。



「最初から私も殺すつもりだったんですね」



 この速度でこの規模の魔術は予め行使しておかなければ不可能だ。



「自分すら信用できないのに、他人なんて信用できるわけありませんわ」



「一生そうやって誰も愛さず、だれにも愛されずに終わるんでしょうね」




 サリンは眉一つ動かさずに次の魔術を行使する。



「何も問題ありませんわ」



「フッ!ハァッ!…そんな事を続けていればそう遠くないうちにカロンも貴女を見限るでしょう」



 サリンは攻撃の手を止める。



「…貴女、剣には自信がお有りですの?」


「少なくとも貴女に負けないくらいには、ですがね」



「フフッ…よくってよ、貴女の得意な剣術で潰して差し上げますわ」



 サリンは衝撃の魔術を廊下の壁に向かって行使する。



ガゴンッ



 強い衝撃により砕けた壁から半ば、はみ出た支柱を魔術で切断して丁度直剣と同じような長さにする。



「まさかそれで戦うつもりですか?」


「貴女、騎士団に入団して何年目かしら」



 そんなやり取りをしているうちにイレスは両者を通り抜けて廊下を進むが、もはやサリンはイレスを止めようとはしない。



「8年ですよ、サリン様(イレスはカレンの元へ向かったか…)」


「わたくし達…王族は5歳から剣術を習いますわ」



 サリンは支柱を構える。



「たかが8年間対魔族用剣術を習ったところで…11年間対人間用の剣術を習ったわたくしに勝てるかしら?」



「たかが生身で鎧を装着している騎士に勝てますかな?」




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