87.怒らない怒らなイ!
男の人とカーンさんは少しの間にらみあって、男の人が先に口を開いた。
「…たとえ騎士様だろうと魔学研究所に制裁を加える権利は無いとおもうが」
「たとえ権利がなくとも、私はこんな非人道的な事を許さない」
男の人はやれやれといった感じで話をつづけた。
「騎士様にあるまじき発言ですな、騎士様ならば規律を最優先するべきだと思いますが?」
「騎士だからこそ、だ」
男の人は困ったような顔で深いため息をつく、ため息をつきたいのはこっちだよ…
「はぁ…まぁそうですね。ちなみに…私はそこの黒い少年の事は何も知りませんよ、そもそも本当に魔学研究所がそんなことをしているんですか?」
…?この男の人はもしかして本当に何も知らないのだろうか??
「嘘…ではないようだな。ならば研究者にあわせていただこうか」
カーンさんは男の人が嘘をついていないと判断したみたいだ。
「ワタシに何か用かナぁ~?」
「ぅわっ…」
…びっくりした…!!全く気がつかなかったよ…
振り向くとそこには白い白衣に…青くて…ぼさぼさの長髪の女性?…が…
「!?」
この人…!僕をこんな姿にした張本人だ…!!
こうなる前はほとんど覚えていないけど、こうなった日の事は覚えてる!
この人が…!こいつが…!
「落ち着け、いま暴れれば立場が悪くなる。君は話をしにきたんだろう?」
カーンさんになだめられて冷静さを少し取り戻した…とおもう。
そうだ…僕はちゃんと話をしに来たんだから。
「この様子だとお前がこの子をこんな姿にしたんだな。少し話をきかせてもらおうか」
カーンさんは明らかに怒っているみたいだ、こんな僕の為に怒ってくれる人がいるのは素直にうれしい。
「ワタシ忙しいぃ~から、無理かもなぁ~?」
このへらへらしている青髪の研究者の名前は覚えてる。
スタン…なんちゃらかんちゃらだった…はず…
「ふざけるな、時間は作れ」
カーンさんはスタンの襟首をつかみ上げて怖い声で話す。
「ヒぃッ!?こわ、コワいぃ~わかった、わかったから怒らない怒らなイ!ほらっ!ネッ?」
カーンさんは襟首から手を放すとスタンはどさっと地面にしりもちをついた。
「早くしてもらおうか」
やっぱりカーンさんって結構怖い…