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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第3章:光と闇の双子
83/226

83.それでも



 なぜこの姿になる以前の記憶がないのかはなんとなくわかってる。


 …多分この姿になって身体が作り替わったからだと思う。


 こうなってしまった今、元の身体に戻ることなんてきっと無理なんだろう。


 でも…ほんのりと残った記憶は絶対にあきらめるなと言っている。


 僕は…絶対にあきらめないって、あの人に約束したんだ。



「記憶…か」


「はい…今の僕が覚えているのはこの身体になる前に誰かに絶対諦めないって約束した事だけなんです」



 お姉さんは少し申し訳なさそうした。



「その…気分を悪くしたら悪いが、元はその姿じゃなかったのかい?」



 あ…そういえば、お姉さんは僕が何者かすらわからないのに助けてくれたんだった。



「えっと……はい。多分人間だったと思います」



お姉さんは腕を組んで何かを考えているような姿勢になる。



「えー…と、なんで今の姿になったのかは分かるかい?」



 何故こうなったか?…そんなのあいつらのせいに決まっている。



「僕を追っていた人達…確か、魔学研究所…の実験のせいだとと思います」



 村のみんなは魔学研究所の人達は怪しいって言っていた。


 ……村の…ああ、そうか思い出した。


 僕は魔学研究所に連れていかれたんだ。



「魔学研究所が…?人体実験は禁じられている筈だ…この事が公になれば連中はただじゃすまないぞ…」


 公になればただじゃすまない。それを聞いていいことを思いついた。


 こんな無力な僕でも彼らとまともに話すことができるようになる方法を。



「…お姉さん、僕を生き証人として魔学研究所へ連れて行ってくれませんか…?それならきっとあの人たちも僕と対等に話をしてくれると思うんです」



「それは君自身を脅しの材料にする…という事かい?」



 お姉さんは頭をすっぽりと覆っている兜の内側から僕を真剣な目で見つめている…気がする。



「…はい。きっと僕だけで行ってもまともに話は受け入れてくれませんし、そのまま捕まってまた実験台にされるかもしれません」



「それは危険だと思うよ」


「それでもっッ!!」



 一瞬で心が熱される。


 その人の為なら僕は何でもできると心が覚えているかのように。



「それでも…僕はッ…!記憶の中で約束したあの人に逢わなくちゃいけないんです…」



「…」



 …お姉さんは黙り込んでしまった。


 理由はわかる、感情を抑えられない未熟な僕のせいだ。



「あ…お姉さん、ごめんなさい。感情的になっちゃって…」



「いや…いいんだ。少しもう会えない人の事を思い出していただけから…」



 お姉さんは僕の真っ黒な頭をなでる。



「それと私はお姉さんじゃなくてカーン・バゼルフだ、カーンと呼んでくれ」



 おね…カーンさんは僕の頭から手を放して僕の前に手を差し出す。



「っ…!ありがとうございます、カーンさん」



 僕は何の迷いもなくカーンさんと握手を交わした。



「さあ、会いに行こう。大切な人なんだろう?」



「はいっ…!」



 どうか待っててほしい、すぐに迎えに行くから…!

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