82.そうか、ならいいんだ
コンコンコン
ドアがノックされる音で目が覚める。
「…?」
お姉さんだろうか?
カチャ…
「おや、起きていたのかい」
ドアを開いたのは思った通りお姉さんだった。
「あ、今起きたところです」
口に出してから、この言い方だとノックの音で起こされたといっているようなものではないかと気がついた。
「それは申し訳ない、起こしてしまったようだね」
「あ、いえ。大丈夫です…」
恩人に向かってこんな言い方は無いだろうと自分でも思う。
「具合のほうは?」
お姉さんは椅子に腰かけるとこちらを向いて話しかけてきた。
…本当は少し頭が痛いけどこれ以上迷惑をかけるわけにもいかないので平然を装うことにした。
「ゆっくり休んだので具合は良いです」
「そうか、ならいいんだ」
…沈黙がやってきてしまった。
何か話すことはないだろうか?村ではあまり友達がいなかったのでこういうことは慣れていない。
………いやそもそも、そんな記憶は…ない。
なんだろう?記憶がないはずなのに…というか僕は友達がいなかったのか??
「そういえば、残念な事に君を助けたお方は君に会えないらしい」
突然話かけられたので少しびっくりしてしまった。
返事をしなくては…
「えっと…それじゃあお礼はどうすれば…?」
「考えておくって言っていたよ」
考えておく…?もしかしてお礼を思いつくまで死ぬなということなんだろうか?
…多分違うと思うけどそうだったらうれしい…とおもう。
「それで…これからどうしたい?」
…僕は何かの運命?のようなものをこの質問に感じた。
きっとこの質問にどう答えるかで僕の人生は大きく変わってしまうのだろうと…そう思ってしまった。
僕は…
………
「記憶を取り戻したい…です」