8/226
8.ただの胸騒ぎですわ
あれから一度も休まずに歩き続けたお陰か少しずつ死体だらけだった景色は変わり始めていた。
「ここら辺は戦闘が無かったみたいですね」
「そのようですわね、心なしか道も整備されているような気がしますわ」
言われて初めて意識してみると、確かに足元に飛び出た木の根などが無くて歩きやすい。
人の住む村が近いのだろうか?
「村が近いと良いですね」
「ですわね、生き残りがいらっしゃれば尚良いですわ」
「…」
「…」
「…あ。これを見てください」
木の枝を組んだ看板を茂みの中に見つけた。
矢印が進行方向に描かれている、村がそちらにあるのだろうか?
「道は間違えて無かった様ですわね」
姫様の表情は全く変わっていない、普通嬉しい事…だと思うが…
もしかして何か気になることでもあるのだろうか…
「…何かありましたか?」
「…いえ。ただの胸騒ぎですわ。行きましょう」
姫様は歩き始めてしまった。
いつでも盾になれる様にしっかりと着いていかなければ…。