78.天体映写機(プラネタリウム)に
「…旨い」
ローブの男…カコルネル・ハーゼンと言うらしい人は僕が淹れた紅茶を一口含むと顔を綻ばせた。
「母が好きな紅茶なんです」
「…これ勝手に飲んで大丈夫?」
カコルネルさんはスッと不安そうな顔になってしまった。
「大丈夫ですよ、お母さんは優しいので」
「それ本当に大丈夫かよ…」
小さな声でつっこまれてしまった、そんなに心配しなくても多分大丈夫だと思うけどなぁ。
「団長、そろそろ話の続きをしましょう」
カコルネルさんの隣に座っていた白髪の女性が話す。
団長…ってカコルネルさんの事だろうか?き、きになる…
「ああ、そうだった。それでね、さっきの話の続きなんだけど」
「カコルネルさん!」
もしそうだったらサインを貰えるかもしれない!!
「わっ、なんだ。どうしたんだい突然」
「もしかしてカコルネルさんは騎士団長なんですか!?」
カコルネルさんはキョトンとした顔になる。
「何かと思えばそんな事か、そうだなぁ…半分正解で半分ハズレだね」
「団長…コホン。…カコルネル様は第三魔術団の団長です」
「えっと…確かに鎧を着てない…?」
カコルネルさんはローブを摘む。
「僕らにとってはコイツが鎧なのさ」
カコルネルさんがローブに魔力を流し込んだのかローブの内側に細かい模様が現れた。
「凄い…」
「だろ?コイツが僕を地獄に飛び立たせるのさ…」
カコルネルさんの顔が真っ青になった、どうかしたのだろうか。
「もう、イレス。お客さんを余り困らせちゃダメよ」
「あ、カレン!凄いよこのローブ」
様子が気になったのか隣の部屋からカレンが顔を覗かせた。
「わぁ…綺麗ね」
「本当に凄いよね」
ロープの内側で光る模様はとても細かくてキラキラしていて星のようだ。
「団長、魔術団辞めても天体映写機になれるじゃ無いですか。凄いですね」
「いやいやそんな訳ないでしょ、子供に覆いかぶされってか?星空になる前に犯罪者になるわ!」
「あ、ごめんなさい。見惚れちゃってました」
本当に綺麗だった。
是非ともまた見たい…!
「いや…いいんだ…話の続きをしようか」
今にも吹き出しそうな笑みを浮かべる白髪の女性に対して、カコルネルさんは何故か微妙な顔をしていた。