77.モゥー
「モゥー」
「お前は気楽でいいな」
涼しい小屋の影で牛のピィを撫でながらボーッとする。
病のせいで余り運動をする事を許されていない僕はよくこの小屋の影で一際大人しいピィと一緒に過ごしている。
魔力の暴走を恐れた村の連中はまともに口を聞いてくれない、でもピィは逃げもせずに話を聞いてくれるのだ。
「イレスーー!」
家の方からカレンの呼び声が聞こえる、お昼ご飯が出来たのだろうか。
そう言えば朝からなにも食べていない、流石にお腹が空いてしまった。
「いまいくーー!」
「モゥー」
「ピィ、また後でな」
ピィの身体を丁寧にさすってやり、家へ向かう。
「なんだろう」
僕の家の方に人だかりが見える、特に騒いでいる様子もないし誰かが怪我したとかでは無いと思う。
少し急いで近づいて話しかける。
「あの、何か用事ですか?」
「君は…」
ローブを纏った男がこちらに視線を向ける。
「あ!イレス、この人達私達に話があるみたいなの」
ローブの男の背後からカレンがひょっこり現れる。
「僕達ですか?お父さんやお母さんでは無くてですか?」
「あぁ、君達にいい話を持ってきた」
正確には魔人病の人達に、ってローブの男は言葉を付け足した。
「えっと…とりあえず上がってください、お茶出すので」
ローブの男は少し驚いた表情になったがすぐに柔らかい笑顔になる。
「ありがとう」