76.おはよう…
3章です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
誰かがこっちに歩いてくる。
「にげ…なきゃ」
逃げないと、いけない。
せっかくあそこから逃げる事が出来たのに、こんな所で捕まってしまったらカレンを助けられない。
「はぁ…はぁ…っ」
身体が動かない。
ここで終わってしまうんだろうか。
「カレン…」
足音が…近づいてくる…
…
……
………
…………
「イレス?おおーい」
僕を呼ぶ声が聞こえる。
「……!?」
目を開けると目の前に僕の双子の姉…カレンが笑顔でベットに腰掛けていた。
「おはよう…イレス」
…どうやら僕は疲れて寝てしまっていたらしい。
椅子に座ったまま寝ていたからか、身体が地味に痛い。
「…おはよう、カレン」
ベットに腰掛けているカレンは少し申し訳なさそうにしている。
「ごめんね、いつも看病させちゃって」
「気にしないでよ、好きでやってるだけだから」
僕たち兄弟は魔人病…と言う珍しいらしい病気にかかっている。
人間でありながら魔族並みの魔力を持ってしまうこの病気は未だ治療法が見つかっておらず、魔力の量が多ければ多い程多すぎる魔力は身体を蝕み、最後には死んでしまう…らしい。
そして…カレンはこの症状が非常に重い。
お医者様は成人までは生きられないと言っていた。
しかもカレンの魔力が暴走したら僕たちの住んでいる村は簡単に無くなってしまう…それ程までに症状が重いらしい。
「イレス?」
「…うん?どうかした?」
カレンは心配そうな顔をする。
「おでこのシワが凄いわ」
そんなに険しい顔をしていたかな?
「そんなにか…」
「ふふっお父さんみたい」
カレンが笑う。
うん、やっぱりカレンは笑顔が一番だ。
「お父さんの子供だからね」
「でもお母さんはそんなにシワシワじゃ無いわ」
「僕はお父さん似だからいーの」
…神様、どうかこのまま。
このまま生き続けさせて下さい。
死ななければ魔人病が治る日が来るかもしれないんです。
だから…どうか。
いつかカレンが心から笑える日まで。