68.達者でな
必要品を大きな背嚢に詰めて街の一番大きな門を通る。
勿論荷物はほとんど俺が持っている、姫様にお持ちさせるわけにはいかないからな。
「もう行ってしまうんですか?」
門番に話しかけられる、確かゴードン…だっただろうか。
「ああ」
「そうですか…お気をつけて下さい…と言っても騎士様がお二人もいらっしゃるならこの街より安全ですな!ハッハッハッ」
あの後カーンは姫様に付いて行きたいと話した、此方としては姫様を御守りするのに人手が足りなさ過ぎる状態だった為勿論承諾した。
勿論、姫様の了承も得ている。
「ヘイセウ様の件はすまなかった…護るべき人を失ったから、私は一度王国へ帰る事にしたんだ」
「成る程…では少し寂しくなりますなぁ」
ゴードンは薄く寂しい表情をする。
「なに、この街はもう私が居なくても大丈夫さ」
カーンは魔族から街を守る為に一致団結した様子の人々を見つめながら話す。
「いやいや、カーン様はなかなかに人気があったんですよ?」
「そ、そうだろうか?」
カーンはゴードンの言葉を本気で疑っている様子だ。
「それは勿論!子供から大人までカーン様を尊敬しているんですよ」
「ごめんなさい、そろそろ良いかしら?」
話が長くなると判断なさったのか姫様が話を止めなさる。
「おっと、申し訳ない。少し話し込んでしまいましたな」
「それではゴードン、達者でな」
カーンはゴードンに別れを告げる。
「はいっ!またエルザスヘイムに遊びに来てください」
「(遊んでいたわけでは無いのだが…」
カーンはボソッとそんなことを言っている。
きっとヘイセウ氏の事を悔いているのだろう、ならばそれは自分の中で折り合いを付けるべきだ、此処は何も言わないでおこう。