66.人の流れが
喫茶店を退店し姫様と必要品を買いに市場へ向かう。
この時間帯ならば既に店は開いているだろう。
「…人々の流れが激しいですね」
すれ違う人々は皆焦っている様だが、それと同時に何処か覚悟を決めた表情をしている。
「そうですわね」
姫様は自警団を一瞥される。
自警団は魔族に立ち向かうぞ、と叫びながら正門の方へ行っていた。
恐らく麻薬の蔓延で自警団が機能しなくなりモンスターが繁殖してしまったのだろう。
3日間放置するだけで数倍の数に増えると言われているモンスターを麻薬の合法化以降殆ど討伐せずに放置してしまったのだから。
「これからエルザスヘイムはどうなると思いますか?」
「新しい管理人次第ですわ」
新しい管理人…あのゆるい女か…きっと姫様は彼女を試したのだろう。
ー売れと命令された麻薬を逆らわずに売ることができるか。
ー明日中にと言われて早朝にすぐ行動できるか。
ー最後に麻薬で儲けた金を街の為に使えるか…
全ての試験に合格出来なければエルザスヘイムは破滅への道を歩む事になるだろう。
だが…その試験さえ合格できればエルザスヘイムはもう一度栄えることが出来るのだろう。
「…なるほど」
…姫様は多くを語られない。
俺は姫様というお方を理解したい、だが俺は残念ながら平凡だ、ならば平凡なりに姫様の役に立てる様にならなければ。
「今日中にエルザスヘイムを発ちますわ」
「結末は見届けなくて宜しいのですか?」
姫様はニッと微笑む。
「もうココは飽きましたわ」