63.ついに着替えを…!
…サリン様に出くわした翌日、目が覚めてギルドへ向かう準備をしていたところ、[時計塔にて重要な話があるため集まれ]という旨の放送が流れた。
もしかするとサリン様が言っていた事に関係あるかも知れないと思い商人ギルドまで大急ぎで向かう。
朝食のパンと珈琲は仕方なく放置だ。
「あいつ絶対起きてないよな!」
もし管理人がサリン様の思い通りに動けなければ何をされるかわかったもんじゃない。
とにかく急いで走る。
急いだ甲斐がありギルドに今までで一番早く到着した。
…管理人のいる部屋はギルドの受付から少し遠い。
まだ始動時間ではない為メンバーは誰もいなかったのが幸いだ、ここのメンバーはそこそこの人数がいる為邪魔になる。
やっと管理人の部屋の前に辿り着き、ノックをせずに扉をぶちあける。
バァァァン!
「おきろおおおおお!!」
「ぎゃぃぃぃぃぃぃぃぁぁぁ!!?」
半裸の管理人がずっこける。
「まだ着替えてないんですか!早く着替えろ!コラ!」
「ちょちょちょちょぉぉぉ!まっち、まっちくれ!」
無理やり服を着替えさせようとするが管理人の必死の抵抗に一瞬我に帰る。
「ってもう半分着替えてるじゃないですか」
「ハッ!?気がついた!?そそそうなんだよ!もう後スボン履くだけなん!」
ついに管理人が自分で着替えた…その事実にアドルフは涙が出そうになる。
「ついに一人でお着替え出来るようになったんですね…!」
「お着替えて…いや、まぁいいや…そうだ…ホメろ…!もっとホメろ…!!」
管理人は床までずり下がっているズボンを履くことも忘れてドヤ顔をしている。
「放送聞いたんですね、それでついに着替えを…!」
「いんや。1時間前から着替え始めたんよ。てか怖すぎて寝てないんね」
は…?1時間かかって上半身だけ?
…
……
………
「おせええええええぇぇぇよ!!!!オラァァァァァァ!!!」
ずり下がっていたズボンをガッツリ掴み、天高く掲げる。
「えっ…んあっいいいいででででででででで!!?!!」
ズボンを強引に穿かされた管理人はズボンと共に天高く持ち上げられ、じたばたと無様を晒している。
ハハッ笑える。
「くくくいこんでいたいいいい!!!」
そして更に天高く持ち上げられた管理人の髪が積乱雲の様にもしゃもしゃだと言う事に気がついた。
「髪いいいいいいい!!!オラァァァァァァ!!」
どさっ
「いっでっぇぇ!?」
管理人は天から地に落ちる。
積乱雲の様な髪は台風のように物凄い勢いで整えられ美しい巻雲の様にサラッとした。
「ヨシ!時計塔に行きますよ!まだサリン様に殺されたくないでしょう!」
「お"ま"だい"だい"よ"お"お"お"…!」
股をさすりながらめそめそ喚く管理人の手を握り時計塔へと向かった。