58.化け物め…
廊下を走る。
自分の慌ただしい足音と廊下の軋む音が聞こえる。
「クソッ…!ついに私を殺しに来たか!?」
こんな所でアッサリ殺されるわけには行かない。
屋敷の玄関に到着してすぐに大きな扉に手を掛ける。
「そもそもカーンが対処出来ない相手を自警団がなんとか出来るのか…?まぁいい…ぐっ…なんだ?」
扉が開かない。
どれだけ力を加えても扉が開く様子は無い。
「隠し通路の一つや二つ作っておくんだったな…」
ぐちゃり
後方で気味の悪い音が聞こえる。
振り返り、廊下の奥にその異様な姿を視認する。
「化け物め…」
人型ではない、簡単に言えば人肉の集合体だろう。体の節々から目玉や骨がはみ出ている、まるで悪夢の住人の様だ。
カーンの姿はない、おそらくこの化け物に殺されたのだろう。
ここまで絶望的な状況でも発狂しない自分に少しだけ驚く。
「早速コレを使うことになるとは…」
同志に渡された黒い球を取り出して口元へ運ぶ。
そして…ふと思い出す…
「(さっきの少女も同じ物を持っていなかったか…?)」
口に入れて飲み込みかけた黒い球を吐き出す。
まさかとは思うが…もしこの球に人を化け物に変える力があったとすれば、私もきっと眼前の化け物を同じ末路を辿ることになるだろう。
「クソ…!こんなもの!」
黒い球を化け物に投げつけると球は簡単に砕け散り、消えて無くなった。
そして…
「あら、御機嫌よう」
すぐ隣から聞き覚えのある声が聞こえた。