57.何を言って…
「はぁ…疲れた」
やっと仕事が終わった…部屋に窓がない為閉鎖感が凄く精神的にも疲れていた。
…麻薬が合法になってから仕事の量は非常に増えている。
机の上にばら撒かれている書類に目をやるがほとんどが麻薬の合法化に対する苦情だ。
「ほとんどクレーム…だな…」
しかし新しい事を始めれば周りに叩かれるのは当たり前だ、だが時間が経てば周りも冷静に物事を考えることが出来る様になるだろう。
「ヘイセウ様紅茶をお持ちしました」
私の騎士カーンが紅茶を持ってきてくれた。
カーンが淹れた紅茶は美味い…気がする…正直紅茶の良し悪しなど分からないが好意で淹れてくれてるのだから断る理由など無い。
「ありがとう」
紅茶を一口飲む。
ドサッ…
誰も居ないはずの隣の部屋から音が聞こえた。
「なんだ…?」
「ヘイセウ様は此方でお待ちを私が確認してまいります」
気がつくと既に抜刀していたカーンは隣の部屋へ向かった。
また暗殺しにきたか…?無闇にこの部屋から出れば余計に危険になるかもしれない、ここはカーンを信じて待つ事にする。
ガチャ…
しばらく待っていると、部屋の扉が開かれた。
「ヘイセウ様…なぜかこの子が1人で部屋に」
「貴女がヘイセウですか」
カーンが連れてきたのは赤毛の少女だった。
良かった、暗殺者ではないようだ。
「ああ、私がヘイセウだ。お嬢ちゃん、なんのご用事かな?」
凄い形相でこちらを睨み付けてくる、ナイフや武器になる物を持っては居ないのに危険な予感がする。
「話す必要は無いです。あなたがすでに人間ではない事は知ってます、この街の為!討伐させて頂きます!」
「なに…?何を言って…」
赤毛の少女は見覚えのある黒い玉を呑み込んだ。
「うっグゥ…!あ…が…ああ…!」
少女は苦しみ始める。
苦しみながらもこちらをずっと睨めつけている。
「これは…まさか……ヘイセウ様お逃げください!」
「わ、わかった。すまない!」
だが、入り口は少女が陣取っている為通ることが出来ない。かといってこの部屋は外から侵入できないように窓が無い構造になっている。
「緊急時です、致し方ありません!ハァッ!!」
カーンは凄まじい音を立てて3回壁を斬りつけ、壁を強く蹴った。
すると三角形に壁が切り抜かれて隣の部屋に逃げれる様になった。
「助かった、自警団を呼びつけて戻る!」
今は走るしかない。こんな所で死ぬわけにはいかないのだ。