55.せめてはんぶん!
「こここの度は…どォどぅういったご用件で……………???」
サリンは顔色一つ変えずに話し始める。
「まず残っている麻薬を明日中に全て売りなさい」
「あぁあぁ!良かった…!麻薬を売り買いして儲けてるから、合法とはいえ粛清でもされるのかと……え……全部??」
ケロイはとりあえず安堵した…が、次の瞬間青ざめる。
―今はタイミングが悪い、確かに今売れば儲けはでるだろう…だが長い目でみると確実に損するだろう。
「そ、そんな…せ、せめてはんぶん!半分だけにして下さいイィィ!!」
地面に這いつくばってサリンの慈悲を懇願する、側から見ると余りに情けない姿だ。
「カロン」
「はい」
カロンと呼ばれた男はケロイの目の前まで歩いてくるとそのままケロイの手首を掴む。
外套から出た腕はやはりゴツゴツした鎧を纏っている、サリン様もいる事からおそらく騎士だろうとアドルフは予想する。
「へ?おおっわっと…!?」
騎士はケロイを引っ張り上げ、土下座を強制的にやめさせた。
「麻薬は全て売り払いなさい。三度目は無いですわ」
サリンはやはり顔色一つ変えずに話す。
「管理人、言われた通りにしましょう」
「うぅ………分かりましたぁ…」
アドルフがそう言うという事は逆らうと良い事は無いという事、と理解しているからこその決断だった。
「よろしくてよ。では次に数日後、街の管理人に立候補しなさい」
「へ?…それってどういう…」
今はヘイセウが街の管理人である。
ヘイセウは若く無いが別に病気だとか大怪我をしたという情報はケロイの元に入って来ていない、ならば数日後にヘイセウ氏は管理人を辞退するのだろうか?
…ケロイは必死に考える。
「内緒、ですわ。では御機嫌よう」
サリンは人差し指を口元に寄せてウインクすると、いつのまにかサリンの一歩後ろに控えていたカロンと共に虚空へ消えた。
「……一体何が起こってるん…?」
「さぁ…一体これから何が起こるんでしょうね…」
取り残された2人はただひたすらに不安になるのであった。