54.オキャクサン…
「へ…?オキャクサン…」
アドルフに平手打ちをされ半分程正気に戻っているがまだ状況が掴めていない。
「貴女がケロイ・ハルフートですのね?」
育ちの良さそうな言葉遣いだ。ケロイは職業上色々な人物と会話するが、この様な言葉遣いをする人物はあまり記憶に残っていない。
「えぇ……。確かにお探しのケロイですけれど…」
「あら、嘘はつきませんのね」
「…………(まるで嘘をついても構わないと言っている様な…いや、嘘をついたところで全てお見通しだという脅し…!?あぁ〜!酒のせいで頭が回らないぃ〜ッ!)」
運が悪いのか、またはこの状況も全て計画通りなのか…ケロイは酔っているせいで普段の調子を出せていなかった。
「一体どんなご用件ですか…?」
ケロイが沈黙した為、代わりにアドルフが話を繋げる。
ちなみにアドルフはいざとなったらケロイを抱きかかえて逃げれるように常に身構えている。
「これは取引ではありませんの」
女性の方がフードを外す。
「ヒェッ…!!」
ケロイが悲鳴を上げたのには二つ理由がある、一つは超有名人で権力がある人間だったから。
そしてもう一つは…
「命令ですわ」
王国の民に狂姫と畏れられていた存在だったからだ。