52.えっと…ありがとう…
「それではわたくし達は下準備をしてきますわ」
「えっ…あぁ、はい。」
心の整理をしているといつのまにか黒い外套に身を包んだサリン様と騎士様が窓際に立っていた。
なんでそんな格好をしているのか聞きたくなったが聞かない方が良い気がしたのでやめておいた。
「それと…今日は私の部屋に泊まるといい。…安心しろ私は別の場所で眠る」
騎士様はそれだけ言い残すとサリン様と一緒に消えてしまった。
「えっと…ありがとう…」
私しかいない部屋で1人虚空に向かってお礼を言った。
ーーーーーーーーーーー
カタッ
少し角度のついた屋根の上に2人は転移した。
もちろんカロンの鎧には一時的に軽量化魔術をかけてある、さも無いと屋根に穴を開ける事になる為だ。
夜のエルザスヘイムは街灯や民家の光で装飾され美しい夜景を生み出している。
「やはり麻薬の所為で所々に廃人が転がってますわね」
だがサリンは美しい夜景など目もくれず小汚い路地裏を眺めている。
「街の兵士も麻薬を使用している様子です。もし魔族やモンスターが現れればまともに対処できずにこの街は滅びるでしょう」
街の治安は表面上良くなり商業も繁栄しているようだが、その裏では人身売買等の犯罪が蔓延している。
「次の場所へ向かいますわ」
サリンがカロンの背中に手を当てると、屋根の上から2人の人影は消えた。