51.覚悟だけは負けません
「…これを呑み込むだけ…ですか?」
黒い球はそこそこ大きく、呑み込むだけでも苦しそうなサイズだ。
「いいえ、呑み込むだけではありませんわ。強い覚悟が必要ですのよ、覚悟が無ければ貴女は絶命しますわ」
サリンは隠す様子も心配そうにするでも無く、ただ薄く微笑んでいる。
「わたくし達だけでは魔族には勝てませんわ。だからこそ、貴女の覚悟が必要ですのよ」
ナレは少し悩む。もしかしたら死ぬかも知れない事、この街を救えるかも知れない事。まだ若いナレには余りにも大き過ぎる使命た。
「私は騎士様の様に強く無いし、サリン様の様に賢くありません。…でも」
ナレの様子が少し変わった。
真っ直ぐ先を見る目。
この道にしか進まないと決めた目。
「意志は…覚悟だけは負けません」
そして…これから死ぬ事を悟って尚、悪あがきをしようとする者の目だ。
「良くってよ」
ナレは表情一つ変えないサリンから黒い玉を受け取る。
「使う時まで肌身離さず持っておく事ね」
ナレは受け取った黒い球を強く握りしめる、そしてさらに覚悟を強くした。
「私は変わるんだ…。お父さんは昔から言ってた、たった1人でも覚悟さえあれば世界を変えられるって」