49.そうですの
「あっ!サリン様!騎士様!」
2人を見つけた。騎士様の鎧は目立つから一目でわかった。
「少し遅くなってしまってごめんなさい!」
サリン様と騎士様の元へ走って行く。この街は足元が整備されているから走っても転びにくい。
「いいえ、時間ぴったりですわ」
時計塔をチラッと見ると19時ちょっきりだった。でも本来はもう少し早く着いておくのが常識…だったはず。
「本当は5分前には時計塔前に来るつもりだったので…」
「時間には遅れていないのだから気にしない事だ」
騎士様は呆れた様な仕草で話している。ヤレヤレ…と言った様子だった。
「…それでこれからどう致しますの?」
サリン様が聞いているのは…多分今日この後どうするのか、というよりはこれから私がどうやって生きていくつもりなのかを聞いているのだろう。
「えっと…商人ギルドで働こうと思います」
本当は…怖いけど王国まで一緒に連れて行って欲しい気持ちが強い。でもこれ以上迷惑を掛けるのは…
「本当にそれで良いですのね?」
「…………はい、頑張ろうと思います」
多分、今までで一番の笑顔を作れたと…思う。
…最後のチャンスかもしれない…でも、命の恩人である2人にこれ以上迷惑を掛けるわけにはいかない。
「そうですの」
サリン様は、なにやら興味を失った様子でそう言った。