44.どう考えても
「(本当に麻薬だったようですわね…何を言われるか分かったものではありませんわ)」
「なぁ〜にドギマギしとるんじゃ。安心せい、この街じゃ麻薬は取り締まっとらんよ」
さっきまでからかっていたのか突然普通に話し始める婆をみてサリンは安心していた。…婆は命拾いしたようだ。
「…いつから麻薬は合法になったんだ?少なくとも1年前までは重罪だった筈だが」
カロンの問いに婆は渋い顔をして話す。
「つい最近さね。…本当に突然だったよ、突然放送で[今日から麻薬は合法になった]とな」
「成る程……ちなみに放送した人物が偽物だった可能性はありませんの?」
「あたしもそう思ってヘイセウ様の元へ行ったんじゃが…どう考えても本物だったわけさ」
…ヘイセウ・コロドといえば、エルザスヘイムを管理している男だ。穏やかで人々からの信頼も厚かったはず。
「……そうですのね、分かりましたわ。鑑定ありがとう薬屋さん」
出口のドアに手をかけて礼を言う。
「お代はいらないよ、へぇっへぇっへぇっへぇっ」
何だかんだ悪い人では無かったのかもしれない。
「ありがとうおばさま、また来ますわ」
薬屋を後にする。狭い扉から鎧を擦りながら辛うじて出たカロンはサリンに質問した。
「これからどう致しますか?」
サリンは可愛らしくニッと微笑む。
「ヘイセウに会いに行きますわよ」