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42.とりあえず薬屋
手袋を着けて蜘蛛の民が摘んでいた葉を摘み取る。
「…」
いくつか取られずに残されているのはきっとこの葉が全滅しないようにする為だろう。
もうひとつだけ摘み取ってから転移魔術を再発動する。もうここに用は無い。
パッ…と景色が変わる。先程まで居た宿屋の中だ。
「とりあえず薬屋に見てもらうのが一番確実…ですわね」
ふと、もしこれが麻薬だったらどうしようか考える。確実に面倒な事になるんじゃないだろうか。
「…カロンに護衛を頼んだ方が良いですわね」
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その後カロンに護衛を頼むと案の定「お伴します」と即答され今に至る。
「まさかお一人で薬草を摘みに行かれたのですか…?」
「ええ、そうですわ」
しばしの沈黙が訪れる。
「…次からは、私に声をかけて頂けると幸いです」
心底心配しているのが伝わる声音だった。本心は分からないが。
「御免なさいね。次からは声をお掛けしますわ」
ニッと微笑むサリンを見てカロンはそこはかとない不安を感じた。