39.いや別に君のお父さんは
「…っ」
これまで大人の人との真剣な話し合いなんてほとんどした事がない。非常に緊張してしまう。アドルフさんも部屋から退出してしまったし。
「…」
ギルドマスターは私が緊張しているのを分かっているんだろう。だからあえて私から話すのを待っていてくれているんだ…と思う。
「えぇ…と…何から話しましょうか…」
とりあえず…私はサリン様と騎士様の事以外を素直に話すことにした。
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「なる…ほどね」
ギルドマスターは少し俯く。
「私これからどうすれば良いんでしょうか…お父さんなら跡を継いで今回の件の賠償金を払う事から始めるべきでしょうか…?」
私が恐る恐る尋ねるとギルドマスターはクスッと笑う。
「いんや。大丈夫だよ。雇ってた護衛達は正式に雇っていたんだろう?」
確か護衛のおじさん達はみんな同じエンブレムをつけていたはず…
「えっと、はい。たしか…
私はエンブレムの特徴を説明する。たしか剣と盾に松明?の絵があったと思う。
…と言った感じでした」
「うん。ちゃんとまともな護衛だったみたいだね。なら保険金が出るから安心していい」
今の一言で非常に安心した。もしかしたら一生返金暮らしになるかと思っていた。
「護衛に失敗すると保険金が支払われるんですね…」
「まぁ色々と条件はあるんだけど…あそこはソコが売りだからね。安心しなよ」
「でも、ますます私はこれからどうすれば良いのか分からなくなりました…」
私の言葉を聞いてギルドマスターは少し考えるようなそぶりをする。
「えっと…孤児院に行くか…ここのギルドメンバーとして働いてみる…とか?」
「でも私お父さんのように才能があるわけじゃ無いですよ」
「いや別に君のお父さんは」
バコ
「コラ」
いつのまにか部屋に入っていたアドルフさんがトレーでギルドマスターをたたいた。
「ほらお茶菓子をお持ちしましたよ。どうぞ」
「あり、ありがとうございます…」
私の前にお菓子を置いてくれた。一口食べてみると甘みが口の中に広がって幸せな気持ちになる。
「それで、ナレちゃんはどうしたいんだい?」
私の、したい事…か