37.じゃあ帰りますね
「死体が見つかったとか?」
管理人はアドルフが淹れた紅茶を啜りながら話す。
「いいえ。正直死んだとか、見つかったとか一切聞いてません。私の直感ですね」
「え…?直感で上司に報告しちゃう?」
アドルフはにっこりと微笑む。
「あ、じゃあ帰りますね」
アドルフはそそくさと部屋を出ようとする。
「あっ!ちょっと!ちょっと待って!」
管理人…ケロイ・ハルフートは焦っていた。
…アドルフは別に交渉が上手いとか、市場に詳しいとかそんな特技は無い。だが…ひとつだけ特出して優秀な点がある。
「冗談だって!冗談!まって!待ってください!お願いします!君の直感は信じてるって!」
異常な程に感が鋭いのである。
その実、ケロイは何度も何度も何度も何度もアドルフの直感にはお世話になっている。
「じゃあ土下座して謝ってください」
「この度は大変申し訳ありませんでした。どうか帰らないで下さい。」
アドルフは大層面倒臭そうな表情になる。
「そういう所は潔いですよね。管理人」
部屋のドアノブから手を離して椅子に座る所を確認してケロイは安心した。
「はは…君の直感は良く当たるからね…」
ケロイも立ち上がり対面の椅子に腰を下ろした事で話しが進もうとしていた。