36.窓から捨てますよ
コンコンコンコンコンコンコン
カチャ…
「ノックはしましたからねぇ…」
受付の男は管理人室の扉を静かに開き、部屋の中を見回す…が管理人の姿は無かった。
「もしかして…」
恐る恐る管理人のデスク下を覗き込む。
「うわ、いたよ」
「…………」
デスクの下で小さく丸まった生物が静かに寝息を立てている。
「管理人。起きてください」
「…ねぇみ………」
可愛らしい声で眠いと説明するが、んなもん見れば分かるのである。
「起きて下さーい」
ドムッドムッドムッドムッ
「…っ…いっ…いで…いでぇ……」
受付の男は管理人に容赦なく蹴りを入れ続ける。
「早く起きないと全裸にして窓から捨てますよ」
「!?ちょ…ねてな…寝てないよ。起きたよ」
濃いブラウンの髪色に薄い青色の瞳を持ち、目元にクマがある女性がデスクの中から這い出てきた。
「そんなこと言って。まだ寝てるんじゃ無いんですか?」
「やめ…こらっ…脱がすな。スカート引っ張るな!」
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「ケホン……さて、アドルフ。どんな要件だったかな?」
シワシワになった制服を強制的に着替えさせられた管理人は咳払いを一つして受付の男…アドルフに要件を訪ねた。
「タレの娘が貴女に会いたいそうです」
タレ…ナレの父親である。
「私に?もしかして商人ギルドのメンバーとして生きていく覚悟が出来たのかな?」
アドルフは深刻そうな表情になる。そして一言。
「恐らく、タレは死にました」
「マジ…?」