35.暇なんです
今回は短いです。
「よし…」
私は商業ギルドの大きな扉の前に立ち、その大きな扉に手をかける。
ギィィィ…
大きな扉は音を立てながら開く。思ったより軽く開いたので少し拍子抜けした。
(…うわみんな見てる…緊張するなぁ…)
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商人は新しい者や流行に非常に敏感でなければいけない。自身がそれを扱うかどうかは別として、知っておかなければいざという時不利になる。流行に乗るにしろ乗らないにしろ、まず知っていなければ話にならないのだ。
…故にいつもは父親とセットでやって来るナレがたった一人で来ていたから、注目の的になっているだけである。
「すい、すいません。ギルドマスターにお話があるのですがっ…お時間はありますでしょうか…?」
いつのまにか受付に辿り着いていたナレはカチコチになりながら何とか受付に話しかける事に成功していた。
(ギルドマスター…?ああ…多分ギルド管理人の事かな?ギルドマスターが居るのは王国の本拠点の方だしね)
「管理人なら今からでも会えると思いますよ。最近はモンスターが多くて外に出れないから暇なんです」
受付の男はナレと顔見知りだった。だからこそナレの父親が普段仲良くしていたエルザスヘイム商業ギルドの管理人の事を言っているのだろうと分かったのである。
「本当ですかっ!是非お願いします!」
「かしこまりました。2号室でお待ち下さい」
男は2号室を指して話す。
「ではお待ちしてます!」
男の指した方向には2号室と書かれた看板があり分かりやすくなっていた為ナレは迷わず2号室へと向かった。
「さて、管理人さんが居眠りしてなければ良いのですが…」
どうせ寝ているだろう管理人を起こす事を考えると少し憂鬱な気持ちになる受付の男であった。