32.ゴードンさん!
「あっ!ナレじゃないか!予定よりだいぶ遅かったね。心配していた所だよ」
エルザスヘイムに着いたは良いが…厄介なことに早速門番に絡まれている。
「ゴードンさん!その、色々ありまして…」
ナレはゴードンという人物に事情を話し始めた。姫様を立ちっぱなしにする訳にもいかない、早く話を終わらせてほしいものだ。
「…という事がありまして、この方々に助けて頂きました」
ナレは親父達の事を話した。しっかり我々の事は言葉を濁して、この方が姫だと分からないように説明をしていたようだ。
「成る程…お二人方、ナレを助けて頂きありがとうございました」
姫様はニッと微笑む。
「お気になさらなくて良くってよ。困っている人がいれば救うのは当然の事ですわ」
姫様はその高貴すぎる話し方を隠そうともせずにお礼に返答された。
「なんと強い志を持ったお方だ…!今の時代、自分の事だけで手一杯の者が多いと言うのに…」
ゴードンとやらは感心した様子だ。暇なのかなかなか会話を終える気配がない、強引に話を進めた方が良いだろう。
「門番。ここを通して頂いてもよろしいかな?」
「おっと申し訳なかった。勿論お通り下さい。エルザスヘイムは良い所ですよ!」
「感謝する」
すんなり通して貰えた。さて…まずは姫様の宿探しから始めようか。
「あっ!最後にこれだけ言わせてくれ!」
ゴードンに呼び止められ、足を止める。
「この度はナレを助けて頂き、本当にありがとうございました。亡くなったタレさんもきっとホッとしていると思います」
「ゴードンさん…」
少しだけ横を向くと視界の端でゴードンが頭を下げて礼を言っていた。どうやらある程度の常識はあるみたいだ。だがここでいちいち振り返って答えていては話が進まない為答えずに進む。
「私絶対強くなります。私を救って下さったお二人の様に誰かを助けられるようになりたいです」
門を後にしたナレが小さい声でそう言ったのを俺は聞き逃さなかった。