28.なるほど…
「何を集めているのかしら?」
姫様は優しい口調で蜘蛛の民に尋ねていらっしゃる。
「これはネぇ、傷の治りを早くする薬草なノよ♡」
蜘蛛の民は8本ある足のうちの一本に括り付けてあった袋から薬草を取り出して見せてくれた。
「誰かが怪我してしまったのかしら?」
姫様に尋ねられた蜘蛛の民は少し困った様な顔をする。…まぁ、その顔が本当に困った様な顔なのかは人間である俺には分からないのだが。
「そうなのヨ…アタシの弟が怪我しちゃってネ」
「あらまぁ。弟さんが怪我してしまったのですわね。もしかしてモンスターに襲われたのかしら?」
蜘蛛の民は姫様の問いに頷いた。
「確かニ、モンスターに襲われたって言ってたわネぇ。モンスターがアタシ達を襲うなんてほとんど無いんだけどネぇ」
「なるほど…最近はモンスターが活発になっている様ですわね。貴女もお気をつけなさってね」
「モチロン。アタシはそこそこ強いから大丈夫ヨ♡人間サンも気をつけなさいネ」
姫様はニッと微笑む。全くもって可愛らしい微笑みだ。
「ありがとう、気をつけますわね。さて、そろそろ行きますわ。さようなら、蜘蛛の民さん」
特に姫様は何かをするわけでもなく蜘蛛の民に別れを告げなさった。
「バイバイ。人間サン♡」
蜘蛛の民はまた薬草集めに戻る様だ。そして姫様はこちらに振り向く。
「さて、カロン。問題がまた一つ増えたかも知れないですわよ」