26.貴方は
「おはようございます姫様」
声をかけた直後天幕は開かれ姫様が御出でになる。おや…今日はいつもより派手さが控えめのドレスを着ている。色も黒を基調としており所々に白が入っている程度だった。
「おはようカロン。今日はあまり目立たない服を選びましたのよ、どうかしら?」
「目立ち過ぎず、姫様の美しさを隠しきらずの程よい調和が取れていてとても良いと思います」
姫様はニッと微笑む。
「ありがとう」
どうやらこの褒め方で正解だった様だ。ファッションには疎いからしっかり評価できるか心配だった。
「ナレは父に別れを告げています」
昨日ナレの父達を埋めた場所を見るとナレはかがんで目を瞑っているのが見える。
「死体なんて只の肉塊だと言うのに…困った娘ですわね」
姫様は"やれやれ"といった感じで話す。
「…辞めさせますか?」
姫様はきょとんとした表情になられる。
「カロン、貴方は変わっていますわね。普通こういう時は別れくらい自由にさせてやれ、と言うところではなくって?」
姫様はさっきまでと違う事を言った。もしかして俺を試していたのだろうか?ならばきっとこれは正解だろう。
「姫様の意見が最優先ですので」
姫様は見たこともない様な表情になる。たいして長い付き合いではないが、これが不愉快な表情ではない事は直感的に分かる。
「貴方は否定しないのですわね」
「お待たせしました!」
……どうやら父との別れは済んだ様だ。ならばエルザスヘイムへ向かう事にしよう。姫様を王国へ送り届ける為にも。