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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第1章:個性
22/226

22.間違っていませんわ

女騎士ユヒサ視点です

「!…やっ…あぁ…またにげられちゃった…」



 私の一番大切な方、アトロ様はまた蝶を逃してしまった。あぁ…助言致したいっ…でも助言してしまっては公平でない…。あぁ…アトロ様…ポケットの中に優しく包み込むだけでは逃げられてしまいますっ…あっ、また逃げた…




 ふと、鼻歌が聞こえる。



「〜♪」




 鼻歌を歌っていたのはメチル様だった様だ。…おや、何かを作っていらっしゃる。魔術で作った糸を編んでいる?声をかけてみよう。




「メチル様、良い手際ですね。何をお作りに?」




 メチル様は網状のものを手にして可愛らしい笑みを浮かべる。



「蝶を捕まえる網と、檻ですよ」




「なるほど…」



 少し驚いた。虫網や虫かごは一般的だけれど、メチル様は虫網や虫かごの存在を知らない筈…。基礎を知らないのにそんなにあっさりと発想出来るものなのだろうか…。



「…素晴らしいです。メチル様」



「ありがとうユヒサ♪」




 メチル様はお作りになった特性虫網を持って幻想蝶を捕まえに向かわれた。…あ、どんどん捕まえてらっしゃる。1位はメチル様になりそうですね。



 次はサリン様の様子を伺おうと辺りを見回す。








「………あ、サリン…さ…ま」




 …言葉を失った。サリン様の足元には何かがこんもりと山積みになっていた。よく見ると全て潰れたり、千切られた幻想蝶の死骸だった。




「あら、ユヒサ。そういえば時間制限を聞いていなかったですわ」




「サリン様…これらを全て…?」




 サリン様は微笑みを絶やさない。




「そうですわ。それで時間は?」




 …これは…良くない。子供のやる事だから、とはいえ、このままでは。サリン様の将来が危うい。




「サリン様…いけません。生き物を無闇に殺すなど。蝶も…生きているのですよ?」




「そんな事知ってますわ。それで時間は?」



 一瞬怒鳴ってしまいそうになる。だが、頭ごなしに怒鳴りつけるなど言語道断、しっかり理解していただかなければいけない。



「っ……知っているなら尚更です。…サリン様、蝶を生きたまま捕まえられないのならお花摘みをしましょう…?それなら…」



「花は殺しても良いと?花も、蝶も、人間も。全て同じ命なのでしょう?」



 サリン様は話しながら幻想蝶を握りつぶしている。微笑みを絶やさずに。




「…同じ命と分かっていながら、何故蝶を無闇に殺すのですか!」




「勝つ為に必要な事だからですわ。最終的に沢山捕まえた者の勝ちなのでしょう?殺せば逃げられる事も無いですし。キープする為の檻を用意する時間も必要無いですわ。効率的でしょう?」




 …勝つ為に…?何を言って…たかが遊戯じゃ無いですか…。




「サリン様…それはおかしいです…。そんな事、間違って…


「間違っていませんわ」




 サリン様は強い口調で私に反論なさった。




「絶対に間違ってなんか無い。いつだって、必ずわたくしは正しいですわ」




「なにを…」



「こうするしか無かった。それ以外の選択なんて選べなかった。だから…これが一番正しいのですわ。…それを証明して差し上げますわ」



 サリン様はもう微笑んでいなかった。

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