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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第7章:狂姫と天才
213/226

213.スタン


「とりゃッ!」


「…」



 電撃魔術を行使して不意打ち気味に放った刺突をいともたやすくいなされる。


 分かっちゃいたけどまるで勝てる気がしない。


 近衛騎士相手に接近戦を挑むとかマジで意味の分からない状況だけれど、後ろにサリン様がいらっしゃるのなら超有意義だ。


 それにサリン様は時間を稼げとおっしゃった。


 だから…やらせていただくしかない。



「邪魔をするならお前も殺す」


「やめてぇ!殺さないで!!?」



 ちょっと言ってみただけだけどこの騎士まるで表情が変わらないなぁ…。


 まぁいきなり不意打ちしてきた奴の命乞いとか聞く耳持ってくれるワケないかぁ。


 そんなことをのんびり考えている暇もなく近衛騎士は一歩詰めて剣を振ってくる。



「…」


「うぉっ…!とと」



 ギリギリのところで躱す。


 電撃魔術を身体強化に回してもギリギリ、これが近衛騎士の力か。



「ドルテぃ!」


「む」



 "浮遊"魔術を近衛騎士に行使し、身体を浮かせて行動を制限する。



「フッ!」


「小賢しい真似を」



 すかさず回り込んだドルティが宙に浮かぶ近衛騎士に接近して短剣を突き刺す。


 がしかし、あと少しのところで起用に身体をねじった近衛騎士に短剣を持った腕を掴まれる。



「てめぇ!」


「まずはお前からだ」



 ヤバイ、浮遊魔術の行使を中断して助けに入るか?でもここで中断すれば相手は自由になるし、相手の思うつぼかもしれない。


 どうする?どうする、どうする。


 近衛騎士の剣が振りかぶられて。



「がっ!?」



 青黒い光の線が近衛騎士の身体を貫く。


 一本、二本三本。



「二人とも離れてくださるかしら、当たるかもしれませんわ」



 四本五本六本。


 サリン様の銃口を思わせるような指先から行使された魔術の弾丸は合計六発、近衛騎士に撃ち込まれた。


 とんでもない魔術だ、命中力を犠牲に貫通力を重視した構成。


 強度の高い鎧を貫通するほどだ、相当な魔力を消費する魔術だと思う。


 実際本来の魔力の色に近い色をしていたし。



「た、助かりましたサリン様」


「気を抜いてはいけませんわ」



 あれだけ体に穴を空けられれば普通の人間なら間違いなく死ぬ。


 でも相手は近衛騎士だ、それにもしサリン様が行使した魔術が古い魔弾の魔術なら再装填に時間がかかる。


 サリン様のおっしゃる通り気を抜いてはいけない。



「ごふっげほっ…はぁ…はぁ…統一大戦以前の…古い魔術か」


「ドぉルティ!」

「おう!」 


 穴だらけの近衛騎士が何かを行使しようとしている。


 何の魔術だ?なんにせよ止めるべきだ。


 浮遊の魔術では相手の魔術を妨害することはできない為とっさに電撃魔術に切り替えて接近戦に持ち込む。


 出来ればこのまま終わらせてしまいたい。


 戦闘が長引けば先に魔力切れになるのはワタシ達だろう、そうなれば負けは確実だ。


 まぁそうなったとしてもサリン様だけは何としてでも守るけど。



「はぁ?」



 消えた。


 目の前から近衛騎士が一瞬でいなくなった。


 どうやって?身体に6か所も穴が開いてるのにその速度で動けるはずが…



「いた」



 おなかを見ると血まみれの剣が生えている。


 あ、ワタシ刺されたのか。



「スタン!」



 身体が一気に熱を帯びるような感覚に襲われる。


 あつい、痛い。


 足に力が入らなくなって地面にへたり込んでしまう。


 変な感じだ、自分の身体なのに痛くてあつくて動けない。



「てめぇええ!!」



 うずくまりながらドルティの方へ視線を動かすとワタシを刺していたはずの近衛騎士はいつの間にかドルティから短剣を奪い取ってドルティのお腹を突き刺していた。



「ぐぅ…ッ!」



 ドルティはそのまま地面に崩れ落ちる。


 このままじゃサリン様も…。


 人間って刺されたら何分で死ぬんだっけ?この際もうワタシが死ぬのは仕方ないとして。


 なにか、できることは無いのか。


 考えろ。


 多分あいつは転移魔術を行使したんだ。


 本来だったら膨大な魔力とそこそこの集中力が必要な高難易度な魔術を。


 そんな魔術を使えるのならなぜ直接目的としているであろうサリン様の元へ転移しなかったんだろう。


 そこまでの技量がなかったから?失敗したから?座標を間違えた?


 いや、騎士がそんな失敗をするわけがない。


 できなかったのか。


 それはそうだ、身体にあれだけ穴が開いていれば魔力も漏れ出ていく。


 ほんの少しの距離しか飛べないと判断したから、一番近い位置にいる取り巻きのワタシとドルティを先に狙ったのか。


 ということはつまり。


 残り少ない時間でサリン様に伝えるべき事は。



「さりんしゃまぁぁ…そいつぅ…もう魔力、がぁ」


「…わかりましたわ。後は任せてくださいまし」



 さっきまであつかった身体が少しづつ冷めてきた。


 あぁ痛いけど心地いい。


 意識がうすーく伸ばされていくような。


 感じがする。


 騎士君、頑張ったけどさぁ約束守れなさそうだよ。



「スタン、ドルティ。…ありがとう」



 ああ、心配だ。


 そんな顔をしないでサリン様。


 貴女は笑った時が一番かわいいんですから。


 あぁ…でもやっぱりそのお顔も…お綺麗ですサリン様。

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