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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第7章:狂姫と天才
206/226

206.あの…サリンしゃまぁ…


「あの…サリンしゃまぁ…」


「何ですの」



 騎士君のおかげで何とか王城から逃げる事が出来たワタシ達は今髭おじの隠れ家の内の一つであるという屋敷に居る。


 王都から少し外れた場所に位置している上に髭おじが何やら色々な魔術(専門外なので詳しくは知らない)を行使しているから安全らしい。


 なので一旦情報のすり合わせだけ済ませてさっさと休息を取っていたんだけど…。



「何か、なにか食べて頂かないと大切なお身体に障りますぅ…」


「食欲がありませんの」


「そんなぁ…」



 こんな感じで王城から戻って以来、何も食事を取っていただけないんだよねぇ。


 まだ日付も変わってないしすぐに体調を壊すことは無いと思うケド…心配である事は変わらない。


 こんな時騎士君が無事ならこんな事には…。


 あ、いやまた騎士君を頼ろうとしてるね。


 良くないヨクナイ、ワタシとてサリン様大好きな者の一人としてしっかりご奉仕しなければ。


 いつまでも騎士君に頼ってばかりではいけないんだ。



「…」


「…」


「サリン様」


「なんですの」



 窓の外を眺めているサリン様はこの世の物とは思えない程にお美しい。


 静かな月明かりに照らされた黄金の髪はキラキラと輝いて、深く蒼い瞳は夜の空を思わせる。



「なぜ、ずっと窓の外を眺めておられるのですか?」


「それは…」



 サリン様はワタシの方を見ては下さらない。


 ただ窓の外を眺めながら沈黙していらっしゃる。


 やはりワタシには話してくれないのだろうか?ワタシだけでは足りないのだろうか?


 サリン様の為ならどんなことだってする自信がある。


 でも…だからといってワタシが頑張ったところでサリン様の不安を全て取り除く事なんて出来るのだろうか?


 …不安?サリン様が?どんなことでもそつなくこなして微笑みを浮かべていらっしゃるこのお方が?


 何故そんな事を思ったんだろ。



「あぁ…」


「…」



 外を眺めるサリン様の顔に表情と呼べるものは無いと思って居た。


 いつもちょっとだけ口角を上げた微笑みとも無表情とも呼べる顔とたまに面白そうにころころ笑う可愛らしい顔しか見たことが無かった。


 でも今日色んなサリン様の表情を見て…やっとわかったのかもしれない。


 きっとこのいつもしている微笑んでいるとも無表情とも読み取れる表情は。


 きっと。



「不安…ですか?」


「…………」



 外を眺めたままサリン様の表情が変わる。


 驚いた、と言いたげな表情…そんな表情すらもこんなにも可愛らしいのだからどきどきしてしまう。


 ああ、本当に。


 同性でなければありとあらゆる功績を立てて、サリン様以外の全てを投げうってでも…求婚していたのに。


 でも…きっとサリン様は…それでも。


 ワタシと結ばれることはないんだろうなぁ。



「…」



 きっとワタシとサリン様が何かの奇跡でそうなったとしてもサリン様は満点の幸せを手に入れる事は無いんだとおもう。 


 …なら、サリン様に満点の人生を歩んでもらうのがワタシの使命だよね。



「サリン様、昔王国で働いていた魔術士の古い文献を拝見する機会があったんです」


「…」


「とてもとても古い文献でしてぇ、きっと王族の方々も知らないと思います」


「…それ、禁書の類では無くって?」


「へへ…後で衛兵に見つかった時、散々シバかれた後にその文献燃やされたんで多分禁書だと思いマス」



 でも内容は殆ど読んだ後だったから覚えてるんだよね。


 王国が人類を統治する前に存在してた別の国の魔術書…王国では禁忌だったけど。



「その文献…魔術書に記されていたのはたった一つの魔術でした」


「…それは?」


「多分…人を生き返らせる魔術です」


「……!」



 正直なところ本当に"人間"を生き返らせる魔術かどうかは分からない。


 魔術書は殆ど読んだけど、全て読んだわけじゃない。


 そして何より蘇生させることが出来る対象の条件に適応するのは…多分普通の人間じゃない。


 ワタシだってあの魔術書を読んだ上でつい最近まで人間を蘇生できる魔術が本当に存在するとはおもっていなかった。


 でも今日見た騎士君の様子を考えるとあの魔術書の条件に達している可能性がある。


 要はその魔術に耐えられる可能性があるんだ。



「だからサリン様、まだ騎士君を諦める必要は…」


「その話、後でもう一度聞かせてくださいまし」



 サリン様が勢いよく立ち上がって部屋から出て行ってしまう。



「えっ!?あ!サリンしゃまぁぁあ!?」



 ワタシも手に持っていたトレーを机においてサリン様を追いかける。


 というか速い!サリン様足速くない!?すげぇ!



 小さい足音を立てながら玄関へと走るサリン様をどたばたと追う。


 そしてサリン様が外へとつながる扉のノブに手を掛けたとたんにバリバリ、と歪な音が"外"から聞こえる。



「侵入者だ!!」



 髭おじの叫ぶ声が隣の部屋から聞こえてくる。


 多分さっきのは結界的な物が破られた音なんだろう。


 そうなると外に飛び出してしまったサリン様が心配だ。


 私もすぐに追わないと…!



「サリン様ぁっ!!」



 目に飛び込んできたのは異様なナニカだった。


 体中に剣や槍、矢…いろんなものが突き立てられてなおこちらに歩いて来る大きく異様な人影。


 いろんなところがひしゃげてる鎧のすき間からだくだくと流れる青白く光る血。


 まるで地獄から這い出てきた亡者の様な…。



「カロンっ…カロン!」


「うっっそでしょ…」



 地獄の首なし騎士としか言いようがない姿の彼は当たり前のように傅いたままサリン様に抱き着かれていた。



「私も居るからなァ」


「あの、サリン様この魔術そろそろ…」



 ついでにジオネ氏とドルティもいた。

メリークリスマスです。

クリスマスが一年で一番好きかも知れません。

後今年以内に完結しなかったです。

もう少しお付き合いください。

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