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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第7章:狂姫と天才
184/226

184.あぁ。道理で


「いよいよですね」


「ええ」



 パーティー会場の待合室でいつも通り着替えて雰囲気がガラリとお変わりになられたサリン様と二人時計の針を見つめる。


 数日前に指名手配は撤回されたがサリン様は情報の伝達遅れを考えて今の今まで人前にはお出になられていない。


 この会食で何が起こるかは分からないが…それはまぁ…俺が全て何とかしよう。


 例えどんな事になろうともサリン様だけは御守りするつもりだ。



「準備はお済ですか」


「お疲れ様です。準備は万全です」



 ふっとカコルネルさんが現れてサリン様に美しい装飾が施された腕輪を渡す。



「誤作動は絶対にありません。間違えないで下さいね」


「問題ありませんわ」



 サリン様は受け取った腕輪を右腕にお付けになった。


 それにしても細く美しい腕だと思う、まるで白木の様だ。



「では参りますわよ」


「お供致します」


「もしもの際はここへ戻ってきてください。転移魔術を行使しておきますので」


「ええ、よろしくお願い致しますわ」



 待合室の扉を開く。


 さぁ…ここからが正念場だ。



〇○○○○○○○○○○○○○○○○



「あっ!」



 待合室を抜け廊下に出るとやけに可愛らしく元気のある声が発せられる。


 声の発生源に目を向けると廊下の先で満面の笑みを浮かべたアトロ様がこちらへ小走りで来られる所だった。



「アトロ様っ!?」


「サリンお姉さま!」


「久しぶりですわねアトロ」



 アトロ様は近衛騎士ユヒサの制止を無視してサリン様に抱き着かれる。


 あぁ、なんとお美しく目が幸せな光景だろうか。


 王国の宝とも云われる姫様方が抱き合っておられる。


 一応抱き着く寸前に武器を隠し持っていないか監視魔術を行使して確認したが危険な物は何一つおもちになっておられなかったので止めはしなかったが…うむ止めなくて正解だった。



「元気にしていたかしら」


「ええ!それはもう毎日健康に過ごしていました!」


「ふふっ良い子ですわね」



 心なしかサリン様の笑みが引きつっている様に見えなくも無いが…いや引きつっておられる。


 恐らくわさわさと抱きしめてくるアトロ様に若干戸惑っておられるのだろう。


 常人ならばこの表情の変化、見逃していたに違いない。


 だがサリン様も心から嫌、という訳でも無さそうなので余計な真似はしないでおくべきだろう。



「申し訳ございませんサリン様。…アトロ様嬉しいのは分かりますが…その辺になされた方が」


「構いませんわ。ユヒサ、貴女も久しぶりですわね」



 少し遅れてユヒサも此方に駆け寄って来る。


 きっと久々の再開だからと気を使ってわざと止めなかったのだろう。


 分かっているじゃないか。



「はい…お久しぶりですサリン様。あと…センパ…カロンさん」


「久しぶりだな。…あと先輩と呼ぶ癖はいい加減直せ」



 稽古から勉学まで付き合って居たのが懐かしい。


 …近衛騎士になったと報告してきた時は驚いたものだ。



「うるさいですね…別に良いじゃないですか」


「あら?ユヒサとお知り合いなの?」


「はい。昔色々とお世話になった先輩騎士なんです」



 どうやらユヒサはアトロ様と良好な関係を築けているようだ。


 ちょっと距離が近すぎるようにも感じるが。



「貴方って意外と有名人なのね」


「そんな事は無いと思いますが…」



 さっきまでの和やかな再開の空気感のままサリン様だけが溺れる様な青い瞳で俺をお見つめになられる。


 あぁこれは嫉妬させてしまったのかも知れない、困った。


 どうあろうともサリン様だけが俺の全てなのだが。



「意外と有名ですよ先輩は。勉学も戦闘も適応力も並みの騎士以上で…教えてもらったのを自慢話にできる位には」


「あぁ。道理で」


「そうだったのか…」



 サリン様は何か納得した様子で居られる。


 全く自覚は無いのだが…。


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