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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第6章:命運
171/226

171.船…?

投稿が遅れ申し訳ございません。



 短い間だったが空を飛んだり大沼に落ちたり…とにかく様々な苦楽を共にした魔動車から降りて美しい石畳に足を着ける。



「や、やった…ホントに、ホント~に…」



 少し向こうの方で騎士君の手を取り魔動車から降りているサリン様を見て本当の本当にここまで無事たどり着いたのだと実感する。



「オーコクだァァァァァ~~ッ!!」


「うっさ」



 ワタシに続いて降りてきたドルティが迷惑そうな声を上げるが今はどうでもいいのさ!


 兎にも角にも着いたのだから!王国に!しかもサリン様を無事王国へ送り届けるという大きくて大変…大きな!仕事を全うできた!フゥ~!この感情を口にするとドルティに文句言われそうだからだまッとこ。


 てかサリン様のご帰還ぞ?何故もっと盛大にやらないの!?…フッ…まぁ実際そんなことしたらサリン様の美しさに失神する人が続出して大混乱になるだろうがね…!



「フフ……はぁ……着いたぁ~のか…」



 周りの訝しむ視線を無視して歓喜に打ち震える、けど。



「着い、ちゃったか~…」



 着いて、しまった。


 それが意味するのはサリン様との別れ。



「ううう…ううううっ!」


「は!?何で泣いてんだよ!?」


「だっでぇ~…」



 これで毎日サリン様と一緒に居る事が出来なくなってしまう。


 確かに実際着くまではめっちゃ大変だったし、正直早く帰りて~!とか思ったりもしたよ、でもさ…いざ今になってみるとさ…やっぱり、悲しい寂しい虚しい惜しい狂おしい。



「テメェは泣いたり笑ッたり忙しいヤツだなァ」


「ジオ゛ネ゛ざん"…!!」



 ジオネさんは魔動車の助手席から降りてくるなりヤレヤレといった感じでこちらを見てくる。


 そんな哀れな子供を見る眼でワタシを見つめないでッ!泣きそう!!ただでさえ既に号泣なのに!!



「はァ…仕方ねェ。今夜一通り用事が済んだら飯いくぞ」


「…えっ…?」


「あーいいっすね、打ち上げしましょう」



 も、もしかして…



「浴びるほど酒呑めばァ…気持ちもスッッッキリすんだろォ」



 ワタシの事慰めてくれてる!?!?



「…ジオ゛ネ゛ざん゛好゛ぎっ"!」


「あッオイ!抱き着くなァッ!?」



〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇



「それで、サリン様とアイツはどうするんです?」


「はァ?サリン様を誘えるわけねェだろ、後カロンは私が無理やりにでも病院にブチこむ」


「まぁ…そうなりますよねぇ…ハハ」


「サリンしゃま…」



 サリン様を誘わないと聞いたスタンが見るからに落ち込んでいるがまぁ無視でいいだろう、どうせ酒が入ったら寝落ちするんだろうしな。


 というか私個人としてはサリン様が"例の件"を忘れてないか心配なんだが。

 


「もし病室が一杯だとか抜かしやがッたらァ…患者ぶッ殺して枠開けてやる…」


「ジ゛オ゛ネ゛ざん゛ごわ゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛っ゛!」


(…着いて終わりじゃない…ここから上手くやらないとな…」


「ああァ!?何か言ッたかァ?」


「な、何でもないっスッ!ヘヘ」



 ジオネさん怖っっわ…


 下手な事口走ってシバかれる前にさっさと今夜泊まる宿でも探すか…



////////////////////////////////////////


 夜、王国内で二番目に美しいと言われている大聖堂前で集合、後にお疲れ様会。


 その約束を果たすべく大聖堂前の噴水にやってきた…のはいいが。



(ありゃ、少し早く着いちまったな…)



 辺りを見渡すが勿論スタンとジオネさんの姿は無い。


 …まぁいいか、遅刻して文句言われるよりマシだからな。



「ん?お嬢ちゃん一人かい?」



 はぁ…最悪だ、怪しいおっさんが酒瓶をチャプチャプ鳴らしながら話しかけてきやがった。


 暗くて見えずらいけど声からして三十後半のおっさんだ。



「まぁ、そうですが。何か?」


「おっと、そんな怖い顔すんなよ。…嬢ちゃんいくつ?」



 おっさんはニヤニヤしながらそんな事を言ってくる。


 何処の街にもこういう奴は居るんだなぁ。



「あんたには関係無いだろ、"おっさん"」


「お、おっさんて…はぁ、まぁいいか。若い女の子がこんな夜に一人だと危ないぞ?」



 以外にもおっさん呼ばわりが効いたのか一瞬顔を引きつらせてやがる。


 というか早くスタンでもいいから来て欲しい。



「自分の身くらい自分で守れるんで」


「まぁまぁ、そういわずにさ」



 はぁ…本当にしつこい奴だな。


 スタンが来たところであのスタンが手加減できるワケ無いしここは自分で何とかするしかない…か。



「しつこいッ!」



 後ろ回し蹴りを放つ、勿論寸止めだ。



「は!?」



 …が、私の後ろ回し蹴りはおっさんの首元に届く寸前に何か強力な力で弾かれる。



「おっと…ホント最近の若い女は怖ぇな…」


「何しやがった!?魔術か!?」



 防護魔術!?だが魔術の兆候が見えなかった!ありえない…だけど…!



「クソッ!」



 最速で体制を立て直しておっさんの股間を蹴り上げる。



「うっそだろ!?」


「おい!?股間は駄目だろ!?」



 またしても弾かれる。


 信じられない…防護魔術の多重行使をしやがった…!しかもあの一瞬で…!に、人間じゃねぇ。


 こ、この理不尽な強さ、身に覚えが…。



「ハッ…!そうか、アンタ騎士だな!?」


「あー、ハズレ。俺は騎士じゃないだなこれが」



 騎士…じゃ、ないのか…!?だとしたら一体…。



「じゃあ…一体何者なんだアンタ…?」


「魔術師だよ」



 そう言ったおっさんは左手に持った酒瓶を私の前に差し出す。


 すると…とてもか細く繊細な魔力がおっさんの左手から酒瓶に流れて行く。



「な、何を」


「やるよ」


「は?」



 おっさんに寄こされた酒瓶はチャプという水音と共にカランという酒瓶からは聞きなれない音を立てた。


 それと殆ど同時に遠くから大声が聞こえてくる。



『団長ーーーッ!!』


「やべえ!もうバレた!!」


「え?は?」



 おっさんはそんな事を口走ると、羽織っていた外套の内側を淡く輝かせて宙に浮かぶ。



「若い子は危ないから夜出歩くなよー!じゃあな!」


「えぇ…」



 そのままおっさんは超低空飛行でどこかへ飛んで行った。


 おっさんはとても速くてすぐに見失った。



「なんだあのおっさん……あ」



 つい先ほどまでおっさんに阻まれていた街灯の光が酒瓶にあたる。



「船…?」



 酒瓶の中には飲み口より大きい…クリスタルの船が優雅に酒の海を漂っていた。



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