17.避けますか?
俺たちは焼き払った村を出て半日ほど経った。今は既に村周辺の整備された道を抜け、少し歩きにくい道を歩いている。
「姫様。足元にお気をつけ下さい」
「勿論ですわ」
姫様の足取りは軽やかで思ったより速いペースで進んでいる。この調子だともしかしたら明日の朝ごろには到着できるかもしれない。
「カロン」
「…どうか致しましたか?」
姫様は進行方向を指差している。遠視魔術を使い指し示された方向を見てみると馬車?の様なものが横倒しになっているのが見えた。
「避けますか?」
「いえ。行ってみましょう」
姫様はニッと微笑んで此方を見る
「…承知致しました」
姫様がそう決められたのなら異論はない。
ー〜ー〜ー
「これは…」
「…」
横転した馬車周辺には人間とモンスターの死体が散らばっていた。一目見れば死んでいると分かるほど損傷の酷い死体だらけだ。
「行商人…だったみたいですわね」
姫様は馬車の積荷を覗きながら話しかけて下さっている。
「行商人ですか…なにか個人を特定できる物が有れば良いのですが」
きっとこの行商人が届ける予定だった荷物が届かずに困っている人がいるだろう。その人の為にもしっかりと情報を集めて正しい情報を伝える必要がある。
「あら…カロンちょっと来てくださいまし」
横転した馬車の中から姫様の声が聞こえる。
「如何なさいました?………あ」
馬車の中を覗くと明らかに衰弱した様子の女の子が倒れていた。
「気を失ってますわね。取り敢えず保護しましょう?」
「…承知致しました」
赤髪の少女を抱きかかえて馬車を出る。少女の身体はとても軽く、少しでも力加減を間違えれば折れてしまいそうだ。
「手遅れでないと良いですわね」