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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第6章:命運
168/226

168.うむ、これくらいで無いと

毎度閲覧ありがとうございます。

評価数も増えて楽しく書かせていただいております。

あまり笑えない状況でネタを挟む歪で気持ちの悪いシュールさって…イイよね…!

ハハハッハッ!


「さぁ、行きましょうカロン」



 姫様は触れてそう仰られる。


 行くと言っても何処へ?ガエリオン大沼地支部の所へだろうか?そうなると姫様は囚われてしまうのでは?そもそも今王国に戻ったところで姫様はどうなる?


 …そんな不安達は姫様の前に存在を許され無かった。


 分かるのだ、きっと俺の不安は杞憂なのだろうと。


 既に姫様は後片付けお始めになるのだ、俺が遊戯の勝敗に悩む必要など無いのだ。



「お供致します」


「ふふっ、ありがとう」



 姫様はニッと微笑まれる。


 相変わらず可愛らしい笑みだ、それに…今回の微笑みは何処か清々しさを感じさせて頂ける。



「えぇ~…良く分かんないけどぉ…まぁサリン様だし大丈夫か~!」


「なァサリン様よ」


「なんですの」



 ジオネが姫様を呼び止める。


 ジオネにさっきまでの怒りの様相は無く今は冷静さを取り戻している…と思う、そしてその鋭い視線はまるで姫様の真意を見抜かんとしている様だ。



「サリン様も分かッてるンでしょう、そいつはもう限界をとッくに超えてるンです」


「ええ…それは本当にごめんなさい。わたくしが…お姉さまの様に秀でていれば、カロンがここまで疲弊する事はありませんでしたわ」


「姫様…!?」



 姫様はジオネに謝罪された後、俺に向かっても謝罪なされた。


 姫様にお頭を下げさせてしまった自分自身の未熟さに腹が立つ、俺があんな事で限界を迎えていなければ姫様が謝罪されることも無かったのだ。



「これが…最善でしたの、わたくしには…これ以上の結果は出せませんでしたわ」


「そォですか、まァこれまでの事はもうイいンですよ。私が言いたいのはコレからァの事です」


「…分かっていますわ。でも安心して下さいまし、わたくしの中での優先順位は既に決まっていますもの」



 姫様は少し困り顔でほほ笑まれる。


 その表情からは"仕方ないよね"といった感情が読み取れる…気がする。



「…はァ、本当にそういう感じなンですねェ?じャあ…本当に頼みますよォ。…私にはそいつしか居ないんですからァ」


「ええ、任せて下さいまし"私達"にとって最悪の事態は必ず起こりえないと約束致しますわ」



 姫様はジオネに手を差し出される。



「私達、ねェ」


「ふふ」



 ジオネと姫様はお互いに微笑んで握手をする。


 何処か…物語に必要なピースがそろっていくような感覚がする、きっとこの握手は何か大きな未来を変えたように感じてしまう。



「何が何だかわからん…」


「私に聞いても無駄…」


「大丈夫ぅ~ワタシもわっかんないからぁ~」



 ケーヴ・オルシャ・スタンの三名は良く分かっていない様子だ。


 まぁ分かる必要は無いのだろう、分からない者に必要なのは分かるものにしっかり従うという事だけなのだから。



「それでは、そろそろ向かわれますか?」


「ええ」



 俺は姫様を庇う様に歩く。


 こうしてまた姫様と歩めるとは思っても居なかったのかもしれない、あの時…実はもう諦めかけていたのかもしれない。


 だが俺は諦めなかった、ジオネと再会し…姫様と再会し…その他諸々とも再開できた。


 あの時俺は何故諦めなかったのだろう?…つい数刻前の事だと言うのにもう記憶が曖昧だ、このままではいつか自分が何故此処にいるのかさえ分からなくなりそうだ。


 …ならば尚更諦めるわけにはいかない、ずっと行動を一筋に貫き通せば自分が記憶すら失った時にかつての記録を見て取るべき行動を決める事が出来る筈だ。


 姫様の為に行動し続ければ未来の自分が人格を失っていても…きっと理解してくれる筈だ、このお方だけは守らなければならないと。


 勿論穴だらけの結論なのは重々承知だが…今の俺にはこうする事しか出来ない、思考が邪魔されているのか分からないが上手く考えが纏まらないのだ。



「…」


「?」



 姫様と目が合った。


 姫様はニッと微笑まれる、相変わらず美しさと可愛らしさを両立なされている完璧な微笑みだ。



「そうまじまじと見つめられると気恥ずかしいですわ」


「…あぁ、申し訳ございません。つい…あまりにも美しかったので」


「!?」



 歩いている内にガエリオンの大沼が見えてくる。


 とりあえず森の歩き方を忘れていなかった事に安心した。



「姫様、失礼いたします」


「ひぁんっ…!?」



 姫様を盾を装着している方の腕で抱きあげる。


 泥で姫様の靴が汚れてしまってはいけない、ちなみに腕に布を挟んでいるので鎧が当たって痛いという事は無いと思われる。



「ジオネ」


「…じャあ遠慮無く」



 ジオネも持ち上げて肩に乗せる。



「…む?姫様もジオネも軽すぎる…もっとしっかり食事を


「食ッとるわァ!!」


「騎士君~!ワタシも担いでおくれよぉ~!」


「良いですよ」



 少し屈むと背中にがっしりとスタンが乗ってくる。



「はぁ~楽~」


「うむ、これくらいで無いと」


「え?」



 背後から冷たい声が聞こえた気がする。


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