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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第6章:命運
166/226

166.……そういう事なのですか


「落ち着いたかぁ~い?」



 スタンがケーヴに声を掛ける。


 ちなみに現在は姫様のありがたいご解説を頂いたケーヴが己を見つめなおす為としてガエリオン大沼地に戻らず、森にて小休憩を取っている。



「…はい、少し…考えがまとまったと思うよ」


「それはぁよかったねぇ~」



 心なしかケーヴの表情は少しすっきりしている様に見える。


 ならばそろそろ本題に入ってもいいだろう。



「ならばもう良いだろう。単刀直入に聞くがケーヴ、お前は誰の命で姫様を襲ったんだ」


「本当にハッキリ聞いて来るねえ」



 オルシャからは既に情報を絞り出しているが、彼女が嘘をついていないとも限らないからな。


 ここで話が違っていた場合、スタンには悪いが彼女らにはもう一度死んでもらうことになる。



「ケーヴ…」


「ああ、分かってるよオルシャ…正直に話すさ」



 ケーヴはオルシャにそう話すと覚悟を決めたのか俺に向き直る。



「さっきアンタと闘ってる時に言ったことと同じだよ、メチル様がサリン様を探し出して見つけろっていう命令を騎士団に下したんだ。それこそ殺しても構わないってね」


「ふむ」



 オルシャの話と相違は無い…か。



「でもアタシ達が聞いてた話だと護衛はいないって話だったんだけどね」


「そうか」



 何故メチル様は姫様がご存命であると知っていながら護衛が居ないと勘違いしていたのだろうか?…まるで大戦を見ていたかのような…いや、それならば護衛である俺が生きていると知っている筈だ…ならば何故だ?まさか…知っていた?大戦でこれだけの死者が出ると?だがそんな戦場に姫様が行ったとすれば姫様すら御命が危うくなるのは当然だ…それだけの危険要素があれば姫様だけが生き残っていると分かる筈が無い。


 いや、まて…一つ可能性があるとすれば…姫様がお造りになった兵器が暴走したから生きていると判断したのかもしれない、まず普通に考えれば騎士団と傭兵団が全滅したことを知っていれば姫様だけが生き残っているなんて思いもしない筈だ、それに常識的に考えてそれだけの大戦で姫様たった一人だけ生き残るなんて確率的に難しい事なのだから。



「メチル様が命を下したのは…姫様の兵器が暴走した後か?それとも先か?」


「…先だね」


「なんだと…」



 ではなぜ姫様がお一人で生き延びられている事を知っているのだ!?王国から大戦地までは果てしない距離がある、そんな超長距離を観測できる魔術なんて存在し無い筈だ…!確かに俺が大戦に出兵していた半年で新しく創られたという可能性も無くは無いが現実的ではない…ならばどうやって…。


 ………まさか。



「……そういう事なのですか…メチル様」


「どうしたんだい?」




 一番考えたくは無い、だが…一度そう考えてみれば…そうとしか思えない。


 あの地獄…大戦を仕組んだのはメチル様なのだと、そう理解してしまう。


 本来ならば群れない魔族、前線の重装騎士を無視して後衛の魔術団を狙った広域攻撃、鎧をすり抜ける武器、騎士ですら俺を残して全滅してしまうような激戦…そうだ、完全に奴らは俺たちの倒し方を知っていた、いや…教育されていたのだ。



「…なんという、事を」


「カロン、きっと貴方が想定した事は正しいですわ」



 姫様が俺の隣にお立ちになられてそうお話になる。


 相変わらずお美しい姫様は無表情だが今はどことなく暗い顔をされている。



「きっと…お姉さまは、わたくしを飼い殺しにしたいのですわ」


「…」



 大戦からお一人でご帰還なさった姫様に大戦の責任を押し付けるつもりだったのだろうか。


 …そんな事、させはしない…俺は誓ったのだ。


 何があろうとも守り抜くと、敵が魔族であれ人間であれ関係は無い、全て殺せば良い最後に姫様だけが幸せに暮らせればそれでいい、俺は騎士なのだから。



「カロン?」


「…如何なさいましたか?」



 姫様に声をお掛け頂き、意識が思考の溝から戻ってくる。


 気が付くとオルシャとケーヴやスタンまでもが額に冷や汗を流して顔を青くしていた。



「……っ」


「おィ、カロン」


「どうした」


「その重装鎧、調整してヤる貸せェ」



/////////////////////////////////////////



「うっっっわ…騎士君それなんで生きてんのぉ~…」


「きょ、興味深いですわ」


「怪我して無い場所がほとんど無い…」


「すごい筋肉だねぇ、一体どんな訓練したらこんな身体になるんだい?」



 重装鎧をジオネに見てもらって居る間、俺は皆に筋肉をぺたぺたと触られている。


 何ともくすぐったい…なんて事も無く、実は怪我をし過ぎて身体の感覚が余り残っていないので触られているのかも分かりにくい。


 スタンや姫様は…こう、恐る恐ると言った感じでぎこちなく触れるのだが…オルシャやケーヴは訓練で男の肌になれているのかバシバシ触ってくる。


 それにしても鎧を脱いで居るというのにこの全身を包み込む力は何なのだろう、これも身体が変質しているせいなのだろうか?カエシギ程度なら素手でへし折れそうだ。



「そういえば、アンタは第三騎士団の元団長だったりするのかい?」


「いや、そんな事は無いが…何故だ?」


「正直今まで模擬戦した騎士の中で一番強かったしさ、筋肉も凄いしね」



 一番…?何を言っているんだ?…いやいやまさか。



「今年の騎士団合格者数は…?」


「…1250名」


「お、多すぎないか?」


「それについてはァ私から話してヤるよ」



 調整が終わったのかジオネは重装鎧を魔術で浮かせていた。



「騎士団はなァ…入団条件と訓練をかなァり緩くしたんだよ」


「は…?」


「つまりは騎士団全体が著しく弱体化したァ」


「なにいぃぃぃぃぃ!?!」



 ば、馬鹿な!?そんな事があっていいのか!?伝統ある騎士団の決まりを今更大幅に変更するだと!?ふ、ふざけた事を…!



「だからァザコでも装着して使いこなせるように性能の低い騎士鎧が量産されたァ」


「中身も訓練不足で鎧すらも低性能…」


「おいオイ…一応アタシも努力したんだぜェ?」


「す、すまない」



 それでは一匹の魔族に対して数十人の騎士が必要になるではないか!



「…一応私達第四騎士団の中でも最上位クラス…」


「第四騎士団といえば個々の戦力の高さ故自由行動が許されてるという…あの第四騎士団であってるんだよな?」


「一応アタシの鎧、コレ重装鎧を改良したやつなんだよ」


「おい!?それは嘘だろう!?さっき肩の部分から簡単に引きちぎれなかったか!?」


「いやあ、アタシもびっくりしたよ」



 そ、そんな馬鹿な…あ、ありえん…もう王国は駄目なのかもしれない…



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