162.成程、本ッ当に
いつも閲覧ありがとうございます!
またしても投稿が遅れて申し訳ございません、ウマ娘のSSとか書いてたら遅くなりました。
完結は必ずさせますのでご安心ください!
「…」
「…」
「…」
攫い森を歩く。
勿論俺の腕の中には姫様がいらっしゃる、盾を装備している左手で姫様を抱えさせて頂いている状況だ。
相変わらずふわりと靡く金髪からは良い香りする。
「…」
「…なァ」
ジオネがぽつんと声をかけてくる。
姫様に話しかけている訳では無いだろうと判断してジオネに答える。
「なんだ?」
「さッきから景色が変わッてねェように見えるんだが」
「…攫い森に群生している木…カエシギはその全てが例外なく同じ形状に育つ、景色が変わらないように見えるのも仕方が無い」
カエシギの幹は決して曲らず天に向かって一直線に育つ、そして三角柱型の葉をつける。
この木の成長過程に例外は無い、まさに特徴が無い事が特徴…といえる木だ、それ故にカエシギの群生する森はどこも景色が同じになってしまい遭難者が続出してしまうのだ。
その決して曲がらず育ち続ける様子から、意志の強い子に育って欲しいという願いを込めて我が子の誕生とともに記念樹として植えられる事もある。
「そォいうもんなのか」
「安心しろ、いま私達が何処にいるのかは分かっている」
姫様の護衛中に遭難などするはずが無い。
そんな事では騎士にはなれないからな。
「どォなッてんだよ…」
「簡単だ。どの方向から歩いてきたのか、何歩歩いたのかを覚えておくだけだ」
どれだけ歩いたのかとどの方角から来たのか、それと歩いてきた道がなるべく直線になるように注意して木々を避ける事が大切だ。
まぁそもそも来る時に目印も付けている。
「コツは歩幅を一定に保つことだ」
「できッかよ!」
「ははは、大丈夫だ。安心してついて来い」
ジオネを宥めて歩き続ける。
…本当ならば今のうちに姫様には"例の件"について詳しく教えて頂きたい所だが…流石にそうすんなりと聞き出せる程俺は口上手では無い。
姫様を不快な心持にさせてしまうのでは?という懸念が聞き出すのを阻害している。
…どうにか上手く話を切り出せないだろうか?
「なァサリン様」
「なんですの」
「…」
ジオネは俺を一瞥すると姫様に声をお掛けした。
「指名手配されていましたがァ…なにヤッたんですか」
「……そうですわね」
「…!??」
さ、流石ジオネ…よくそんなデリケートな話題を直球に聞けるものだ。
「ハイ」
「貴女は一人の大切な者と、その他大勢の人間…どちらかを選べばもう片方が犠牲になるとして
「私は大切なァ"者"を選びますよ。たとえ人間じャアなくッても…ね」
ジオネは姫様の問いに割って入り答える。
…大切な者とその他大勢の人間か、俺ならば…いや騎士ならば答えは…あ、いやどうなのだろうか?大切な者が王であるのなら大勢は切り捨てれるが…大勢の中に王がいるのなら…騎士としては大切な者を切り捨てるべきなのだろうか?
…いやそれよりももっと重要な事に気が付いてしまった…俺は…第一に大切な者として王をえらばなかったのだ、何故だろうか?…俺は変わってしまったのだろうか。
「貴女…気づいている様ですわね」
「気が付かない訳、無いじャアないですかァ」
「…?」
ジオネと姫様の会話について行けない、一体何に気が付いているんだ?いやいや…それに騎士である俺が気づけないというのは少し情けないな。
「ふふ、そう…貴女も……良くってよ」
「ありがとォございます」
「………???」
そうこうしている内にもっと分からなくなってしまった。
いや…古来より女性同士でしか分からない話があると聞いた事がある…ま、まさか…!これがソレだというのか…!?
い、いやまて…それで姫様から"例の件"についてお聞きできると言うのであれば何も問題ないでは無いか…ジオネ様々だな。
「まさか…わたくしの創った兵器が暴走してしまうなんて…犠牲になった"人間至上主義者達"には同情してしまいますわ」
「あァ……成程、本ッ当に…アンタは狂ッてるよ」
ジオネはその言葉とは裏腹に楽しそうな顔をしていた。