159.やっぱり騎士って頭おかしいよね
いつも読んで頂きありがとうございます！
「はぁ…はぁ…ふぅ…ふぅ…！」
戦闘による疲労でワタシは沼地に片膝を着く。
相手が騎士だとここまで戦いにくい物なのかぁ…ワタシの電撃魔術の通りも悪いし。
「いい加減諦めたらどうだ？騎士団に逆らっていい事など一つも無いだろうに」
「ひぃ…そういう問題じゃないんだよぉ…」
ぼさぼさになった髪の毛を梳かす隙も無いなぁ…瞬きも左右交互にしないと…次に目を開けた時には視界の中にワタシの身体がコンニチワ！しないとも限らないからねぇ。
というかぶっちゃけ騎士なんかに勝てるわけ無いんだから早く騎士君来てくれないかなぁ！ワタシそろそろ殺されちゃうんだけどぉ～！
サリン様達は大丈夫かなぁ…あっちもあっちで騎士とかに見つかって無ければいいけどぉ…。
「おいっ！ふぅ…助けに来たぞ！」
「？？？？はぁ…？」
「次から次へと…面倒だな」
声のする方を視界の隅で確認すると、そこにはドルティが立っていた。
それはもう堂々と…剣まで持っている始末だよ。
何のためにワタシだけが戦闘を行ってサリン様達を逃がしたと思ってるんだろ…普通さ、抵抗したら殺されるからだってわかるよねぇ？ワタシが足止めして殺されても二人が逃げれればラッキー、ワタシが足止めできずに二人が捕まっても、ドルティは抵抗さえしなければ少なくとも殺される事は無いのにぃ。
ちなみにワタシは騎士君が助けてくれない限り確実に死にまァす！いやまぁ今更死にたくないとか言い出さないけどぉさぁ…ま、まぁ？死ななくていいなら死にたくないよねぇ！
「ひぃん…ドルティ…！」
「何泣いてんだお前」
「？ああ…我々は泣いて命乞いする子供でも容赦なく殺す…だからそんなのは意味が無いぞ」
「何勘違いしてるかわかんねぇけど…いやまて何て言った？…本当に騎士って頭イかれてんな…」
ワタシはいつの間にか零れていた涙を白衣の袖で拭って目の前の騎士を見つめる。
ドルティが助けに戻ってきたのは想定外だったけど…これで、ワタシの生存確率は格段に上がったと言っていいよねぇ。
あとは騎士君が戻ってくるまで時間を稼ぐだけ…！何としてでも生き延びないとねぇ～…！
「ドルティ～！」
「はいよ！！」
ワタシは電撃魔術を行使して無理やり身体能力を向上させて騎士に突撃する。
後ろからドルティも騎士に突撃しているから…まぁ二人して正面から行く理由なんてあんまりないよねぇ。
「とうぅッ！！」
「オォらッ！」
「悪くない動きだな」
ワタシは騎士の目の前でフェイントを交え、無理やり軌道を変えて相手の背後に回る。
勿論ドルティはそのまま正面から攻撃を仕掛けているから…これで挟み撃ちぃ…！
「動きは悪くないが」
「あがっ…！」
「相手が悪いな」
「ぐッ」
恐ろしい事に騎士は身体能力を向上させた私の約3倍ほどの速度で背後のワタシと正面のドルティに対処してきた。
更に動き回られると面倒だと感じたのかワタシには拘束魔術を行使して足を拘束されてしまった。
腹をけり飛ばされ、沼地に身体が落下するのと同時に拘束された足を引きずられる。
「ぐ…オエ……す…たん…！」
「ひ…！」
「終わりだな」
ワタシは騎士に向かって電撃魔術を何度も行使する。
だが電撃魔術は騎士に届かない…まるで当たる直前にかき消されている様だ。
「それはもう理解した。もう効かない」
「ば、バケモン…！！」
「失礼な奴め…私は騎士だぞ？この程度出来て当然だ」
攻撃が通らないと理解したワタシは次に拘束魔術の解除に努める。
アレもだめ、コレも駄目…なにこれ？どうやったらこれだけの魔術強度が保てるんだぁ？…いやこれは…単純に魔力量が段違い過ぎるのかなぁ？
ってことは…。
「し、死ぬ…？」
「…？殺すぞ？」
「や、ヤダ…！やだやだやだやだ」
「我儘言うな」
ついにワタシは騎士の目の前まで引きずられて来てしまった。
騎士は釣った魚でも眺めるようにワタシ片足を持ち上げて見下ろす。
「はァッ！」
「寝ていろ」
「がっ！？」
騎士の後ろから奇襲したドルティは胴体に蹴りをくらって吹き飛ぶ。
気を失ったのか、肺を圧迫されて息が出来ないのか…地に伏せて動かなくなった。
「へ、へへへ…ワタシの事好きにしてもいいからぁ…み、見逃してくださいぃ…」
「うーむ、済まないが妻子持ちだ。浮気はしない」
「ひぃ…真人間…」
「代わりにこれを挿入してやるから我慢しろ」
そう言って騎士は抜剣する。
「イヤアアアア！！やっぱり騎士って頭おかしいよねぇええ！！？」
「ははは、そんなもんだぞ」
ワタシの身体は宙に持ち上げられる、片足を持ち上げられているので丁度お股に剣をぶっ刺しやすい…いやいやいやぁ！？本当にやる気なのかコイツぅ！？
死ぬよりはマシって思ったけどあの剣すっごい長いし股から刺されたらワタシの頭の先っちょから出てくるよォ～！！痛いのやだし死にたくないいいいい！！
「あっ」
「あ」
じわぁ…とズボンに染みが出来る。
この年でお漏らしするのってさぁ…恥ずかしくない？
「……も、も」
「……その…」
「…もういっそころしてくれぇっ！！」
「恥を搔かせるつもりは無かった…すまん」
「ううぅ…死んだ方がマシ…」
「なんだアレはァ…最ッ低だなァ…」
「随分と面白そうなことをしているじゃないか」
そこに救世主が居た。
ワタシが生き残る唯一の可能性、頼もしい存在、味方の騎士。
「ぎじぐううううん！！！」
「なに、…！？これはこれは…」
ワタシを掴み上げていた騎士はワタシを手放す。
「いで」
「私は第三騎士団のカロン・ヴァンヒートだ」
「私はガエリオン支部のジルニス・ケーンだ、先の大戦はご苦労だった。それにそちらは魔学研究所のジオネ・ヴェイン殿では…？」
「あァん？そォうだよ、文句あんのかァ」
ジルニスと名乗った騎士はサリン様の生存や大戦に参加したはずの第三騎士団の生き残りが居る事から大戦は勝利したと察したのかもしれない。
「いえいえ！滅相もございません、貴女のお創りになった騎士鎧にはいつも世話になっております」
「…そォかよ」
「ジルニス殿、私は大戦後サリン様を護衛しつつ王国を目指していたのだが…姫様が指名手配されたというのは…」
ジルニスと騎士君は泣きべそをかいているワタシを無視して話し込んでしまった。
なんか…悲しいねぇ…。
「そうか…貴殿が…、お勤めご苦労だった…サリン様が国家反逆罪で指名手配されたのは本当だ…」
「そう…ですか」
少しの沈黙が訪れた。
新しいシリーズを書いていて投稿が遅れてしまいました。
騎士と狂姫は歩くを読んでいらっしゃる皆さまでしたらきっとそこそこ面白いと思いますので是非時間があれば読んでいただきたいです！
