157.ご同行願います
「アーハッハッ!いやァお前無事だったか!!」
「泣くのか笑うのかどちらかにしておけ…」
俺は奇跡的な再開を果たしたジオネと共に歩いていた。
ジオネはその恐ろしい牙…といったら怒られるのでギザ歯といっておこう、とにかく豪快に高笑いしながら目元に涙をうかべていた。
「お前無事だったンならもっと早く連絡しろよなァ~…!」
「いや、それがだな」
「…ああ、言わなくていい。どうせ大変だったんだろ」
ジオネは一通り笑い終えると少し落ち着いた様子で俺の背中を優しく叩く。
昔からジオネはそこそこ察しが良い、きっとたった一人で歩き続けている俺を見て理解したのだろう。
「でもまァ…無理やり休みを取って捜索しに来た甲斐があったァなァ」
「それは悪い事をした…」
「あやまンなよ、とりあえずはお前が生きてただけでオールオッケーだァ」
何やら上機嫌な様子で俺の隣を歩むジオネ、少なくとも俺から見た感じだと暗い雰囲気は無い。
だが一応確認しておくべきだろう。
「俺…俺達が戦争に出てから王国では何か変った事はあったか?」
「ああ、それがだなァ…何やら私たちのお姫様の、えーとォ…次女様か?…に指名手配が掛かったぜ」
…は?次女…とはサリン様の事だよな?何故?
焦ってはいけない、ジオネも疲れている筈なのだから。
「…それは、何故なんだ?」
「アレだ、次女様が秘密裏に制作していた兵器が暴走したんだよ。それで重役が何人か死んだ、
ついでに騎士も何人か死んだからなァ…あれは相当ヤベェ代物だぜ」
「何という事だ…それは確かなのか?本当に姫様がお創りになった兵器なのか?」
そんなことがありえるのか…このタイミングで…最悪だ、真偽はまだ分からないがもしかすると姫様の不在を狙って第三者が故意に暴走させた可能性も…ある。
「あァ、確実に次女様が作ったモンだぜ。…でもその様子だと次女様はとっくに先の戦争で…」
「…すまないジオネ、用事が出来た」
「はァ?まさか生きてんのか?でもどうするつも
「お前も来てくれるか」
「…り、アー…お前ホント昔から変わんねェなァ。今度は私を置いてくなァ」
ジオネは俺に手を出す、そして俺はその手を握る。
「いつもすまないな、助かる」
「そう思うなら突然居なくなンなよなァ…」
俺はジオネを背中に乗せて長距離高速移動魔術を行使した。
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「はぁ~あ~…沼地に落下して生き残ったはいいけど…これからどうしよう…」
「ここってガエリオン大沼地だろ?ならすぐ近くに騎士達が詰めてる場所があるんじゃないか?」
ワタシ達は何とか落下する魔動車から無事に生還していた、衝撃吸収魔術を行使していなかったらもっとエラい目にあっていたかもしれない。
…まぁ、半分以上沼地にハマった魔動車から抜け出すのには苦労したけれど…。
「詳しいねぇ~…じゃあそういう事でサリン様、そこに行きましょう~!」
「…ええ」
「はぁ…えーとサリン様、あのカチカチ男の事ですからきっと生きてますよ」
「…ええ、そうだと…いいですわね」
暗い面持ちのサリン様を護衛しながら大沼地を進んでく、なるべくサリン様の靴が汚れてしまわないようにしっかりした地面を選んで歩いているので少し進行は遅いけれど、まぁ問題は無いと思う。
「そこの君たち、ちょっと止まって頂けるか」
そんな矢先だった。
目の前に一人の騎士が現れた、王国ではあまり見たことの無い所属プレート…多分さっきドルティが言っていた騎士達の一人なんだろう。
「え~と、騎士様?でいいんですか~?ワタシ達ちょっと困ってましてぇ~…」
「…ッ!もしや貴女様はサリン・シャンカ・バルトルウス・センス様では…?」
「…ええ、それがなんですの」
嫌な予感がした。
たまに来るヤツ、でも大抵当たる予感…このタイミングでは来てほしくは無かった。
「あ~!騎士様、やっぱり大丈夫ですぅ~!自分たちで何とかできそうですので~」
「お待ちください。サリン様、貴方には国家反逆罪の疑いが掛けられております。ご同行願います」
「ちょ、ちょっとまてよ!なんでサリン様が反逆罪なんて…!」
「邪魔をするなら怪我をすることになりますが、よろしいですか?」
騎士が直剣に手を掛ける。
ヤバい、ここでサリン様を渡してはいけない気がする。
それに…
【姫様を任せます】
「ドルティ!!姫様を!!!」
「ク、クソ!!任せろ!」
「貴様ッ!!」
騎士は抜剣し、一瞬で目の前に迫る。
そしてワタシは今までの人生で最速の魔術を行使した。
「ワタシは騎士君と約束したんだよぉ~~~ッ!!!」